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汽水湖から単離された新奇極小細菌の新種・新属提案に向けた解析
○前島 由明1, 久志本 晃弥2, 村口 雄亮2, 佐藤 安里紗1, 飯野 隆夫3, 大熊 盛也3, 金原 和秀2, 新谷 政己2
1静大・工, 2静大院・総合科技, 3理研・BRC-JCM
【背景と目的】静岡県浜松市にある佐鳴湖は,化学的酸素要求量(COD)の高い汽水湖として知られており,特殊な微生物生態系が存在することが示唆されてきた.我々は湖水の成分分析のために,孔径0.22 μmのメンブレンフィルターで湖水をろ過したところ,ろ液にフィルターを通過可能な微生物が存在した.そこで,これらの微生物の単離を試みたところ,フィルター通過可能な極小細菌として145株を単離することに成功した.得られた菌株の16S rRNA遺伝子配列を解読し,相同性検索を行った結果,5株(Ys株,RF111005株, M8-2株,M15株,M34株)については新規性の高い細菌であることが示唆された.そこで,我々はこの5株について,系統分類学的に同定して帰属を明らかにすることを目的とした.【方法】上記5株に対して形態学的性状,生理・生化学性状,化学分類性状,分子系統学的位置の4つの観点から以下実験・解析を行い,特徴付けを行った.まずグラム染色,2%リンタングステン酸によるnegative染色法を用いて透過型電子顕微鏡で観察し,形態学的性状を調べた.温度,pHに対する生育の可否,オキシダーゼ活性,カタラーゼ活性の評価を行うことで生理・生化学性状を調べた.化学分類性状については,キノンタイプと菌体内脂肪酸組成を,それぞれHPLCとMIDIシステムにて解析を行った.また,近隣結合法を用いて,16S rRNA遺伝子配列に基づく系統樹を作成し,分離株の分子系統学的な解析を行った.【結果と考察】5株はいずれもグラム陰性の好気性桿菌であった.また,5株の至適生育温度は30oC(Ys, RF111005, M15,M34株)もしくは35oC(M8-2株),Ys株を除く4株の至適生育pHは7.0 (RF111005株),7.5(M8-2,M15,M34株)であった.主要なキノンは,RF111005株を除く4株について, MK-6(M34株)またはMK-7(Ys,M8-2,M15株)であった.主要な脂肪酸はiso-C15:0(Ys,RF111005,M8-2,M15株)またはiso-C15:1 G(M34株)であったことから,各近縁種と同様であることが明らかとなった.また,16S rRNA遺伝子配列に基づく系統分類学的解析から,4株はBacteroidetes門のCytophagales目もしくはFlavobacteriales目に分類され,近縁種との相同性は92~94%であった.Deltaproteobacteria綱に分類されたRF111005株は,最も近縁な培養株(Geobacter grbiciae TACP-2T株)との相同性が82%と非常に低かった.