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演題詳細

P-055:
Redox環境の変化に適応できる津波堆積物由来の新規硫黄酸化細菌の特徴
○猪原 英之1, 堀 知行2, 高崎 みつる3, 片山 葉子4 1農工大・連合農, 2産総研・環境管理, 3石巻専修大・理工, 4農工大・院農 ihara.fuji@gmail.com
<背景>海洋堆積物は有機物の貯蔵庫として物質循環に重要な役割を担う。有機物に富んだ海洋堆積物では嫌気環境が形成され、周辺の生態系に悪影響を与える。海洋堆積物のRedox環境は潮流や生物活動によって変化し、例えば酸化環境の形成は有機物の好気的な分解を促進する一方で、堆積物が保持する重金属などの有害物質の挙動にも影響する。微生物は堆積物内での物質の変換に強く関与するが、Redox環境の変化に対する微生物群集の応答は不明確である。発表者らは津波で打ち上げられた堆積物を用いて、微生物群集の酸化環境下での変遷初期に硫黄酸化細菌が劇的に増加することを示した。さらに、優占した硫黄酸化細菌の分離に取り組み、堆積物内で優占したOTUと高い相同性を持つ4つの純粋菌株(TSL1, TSL2, TSL3, TSL6)の分離に成功した。今回の報告では分離菌株の生理学的特徴を調べ、既知の硫黄酸化細菌の特徴と比較して堆積物内で優占できた要因を探る。<方法>宮城県東松島市の水田地帯に打ち上げられた津波堆積物を、大気環境下に置くことで硫黄酸化細菌を集積し、その後チオ硫酸ナトリウムや単体硫黄をエネルギー源とした無機塩培地を用いた限界希釈法により硫黄酸化細菌を分離した。生育可能pH、酸素要求性などの生理学的特徴を調べ、既知の近縁種との特徴と比較した。<結果と考察>TSL1, TSL6株はEpsilonproteobacteria網のSulfurovum aggregansが近縁であったが、16S rRNA遺伝子の相同値はそれぞれ97, および96%と低く、新たな細菌種である可能性が示された。一方、TSL2, TSL3株はGammaproteobacteria網のThiomicrospira crunogenaにほぼ100%の相同値を示した。従来報告されているEpsilonproteobacteria網の硫黄酸化細菌はいずれの種においても大気レベルの酸素濃度では生育が抑制されるのに対し、TSL1, 及びTSL6株は大気レベルの酸素濃度で良好に生育できるという新規の特徴を示した。このような酸化環境に対する高い適応性が津波堆積物で分離菌株が優占した要因であり、これらの硫黄酸化細菌が酸化環境に変化した際の堆積物内の物質循環を強く左右する可能性が示された。
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