Imgheader01

第31回大会ホームページへ

演題詳細

P-057:
微細気泡エアレーションが大腸菌のせん毛運動を抑制する
○山梨 由布1, 山下 美雪1, 石間 経章2, 川島 久宜2, 林 史夫3, 伊藤 司1 1群馬大学大学院 理工学府 環境創生, 2群馬大学大学院 理工学府 知能機械創製, 3群馬大学 研究・産学連携推進機構 機器分析センター
 細菌のせん毛は界面への付着およびバイオフィルム形成のために重要な組織であり、せん毛運動を制御することは細菌の存在状態を制御することにつながる。我々は大腸菌を微細気泡のエアレーションに曝すことにより、せん毛の形成および運動が抑制されることを明らかにしたので報告する。
 微細気泡の発生には本研究室で開発した超小型の微細気泡発生装置MiBosを用いた。気泡径は約10~50 μmである。粗大気泡の発生(通常エアレーション)には一般的な水槽用散気管を用いた(気泡径 数mm以上)。これらを用いてM9培地(10倍希釈)に空気を送気して大腸菌K12を培養し、網羅的遺伝子発現解析、せん毛の電子顕微鏡観察等を行った。また、微細気泡エアレーションに曝された大腸菌と通常エアレーションに曝された大腸菌をそれぞれチューブに通水し、チューブ内のバイオフィルム形成量を比較した。
 網羅的遺伝子発現解析の結果から、微細気泡エアレーションでは通常エアレーションよりもせん毛運動に関連する遺伝子群の発現が抑制されていることが示された。そこで透過型電子顕微鏡で形態観察したところ、通常エアレーションに曝された大腸菌細胞にはせん毛がたくさん見られたが、微細気泡エアレーションではせん毛が多い細胞は見つからず表現型としてもせん毛形成が抑制されていることが確認された。また、微細気泡エアレーションに曝された大腸菌のバイオフィルム形成量は通常エアレーションの半分程度であったことから、微細気泡エアレーションはせん毛運動を抑制する効果が高かったと考えられた。
 超小型微細気泡発生装置MiBosを用いた微細気泡エアレーションは、遺伝子操作によらずせん毛運動の効果を評価でき、また、薬剤等を用いずにせん毛運動を抑制できる有用な方法であるといえる。
PDF