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演題詳細

P-059:
Sphingobium barthaii KK22による多環芳香族炭化水素(PAH)生分解の化学的および遺伝的解析
○前田 亜鈴悠1,2, 西 真郎2, 秦田 勇二3, 大田 ゆかり2, 國廣 真里枝4, カナリー ロバート1 1横市大・院理, 2JAMSTEC, 3埼工大・工, 4EMRO
多環芳香族炭化水素(PAHs)は、様々な微生物によって生分解されうる環境汚染物質である。PAHs生分解の化学的および生物学的な理解は、PAHsバイオレメディエーション分野への応用や環境問題に対する解決策を与える手段としてだけでなく、石油由来の原料を再生可能なリグニンなどのバイオマス由来の芳香族化合物原料に代替するためにも重要である。今回我々は、液体クロマトグラフィー連結エレクトロスプレーイオン化タンデム式質量分析(LC/ESI(-)-MS/MS) 装置を用いて、α-Proteobacteria網細菌Sphingobium barthaii KK22株によるPAHsの生変換の化学分析を試みた。その結果、多数のPAHs生変換の代謝産物が検出され、これら代謝産物の包括的なマスのスペクトル解析および標準品のスペクトルの比較解析により, フェナントレンおよびナフタレンをスタート基質として用いた場合、芳香環がメタおよびオルト開裂される2つの分解経路が本菌株に存在することが示唆された。一方、本菌株のドラフトゲノムデータより7種の芳香環水酸化オキシゲナーゼをはじめとする複数のPAHs分解関連物質の代謝に関与する遺伝子群を同定した。これらの代謝産物データおよび代謝遺伝子データから、フェナントレンおよびナフタレンでは1,2-ジオキシナフタレンで代謝経路が合流することが明らかになった。今回の研究での定性および定量解析の結果、本菌株のPAHsの生変換過程において芳香環の開裂時に、メタおよびオルト開裂両方の経路が行われていることが明らかになった。本菌株が属するSphingomonadaceae科細菌はPAHsなどの難分解性化合物を生分解および生変換することが知られている。このSphingomonadaceae科細菌において、2、3環のPAHsにおいてメタおよびオルト開裂両方の経路が検出されたのは、本菌株が初めてである。本研究の成果と関連細菌との比較解析により、PAHs生分解のメカニズムに対する理解が、より進展すると期待される。
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