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演題詳細

P-060:
ブタノール生産性Clostridium属細菌のゲノム情報に基づく発酵代謝系の分子遺伝学的解析
○上原 研人, 秋山 真成美, 金本 美穂, 西澤 智康, 長南 茂, 新田 洋司, 久留主 泰朗, 太田 寛行 茨城大・院農 15am202f@vc.ibaraki.ac.jp
 バイオマスの有効利用方法の一つとして、Clostridium属細菌のアセトン・ブタノール・エタノール(ABE)発酵が注目されている。これまでに、茨城大学フィールドサイエンス研究センターの畑地土壌からブタノール生産性Clostridium beijerinckii SBP2-HB株を分離し、スイートソルガム搾汁液(SSJ)からバイオブタノールを生産することに成功している。SSJはスクロース、グルコース、フルクトースを含んでおり、カタボライト抑制によって、グルコースに比べて細菌のスクロース利用性が著しく低い点が課題であった。しかし、SSJに酢酸アンモニウム(AA)を添加することにより、スクロースの利用性が高まり、ブタノールの生産性も向上することわかってきた。そこで、本研究では、C. beijerinckii SBP2-HB株の糖類輸送系とABE発酵代謝に関わる遺伝子調節機構を明らかにするため、比較ゲノム情報解析に基づくC. beijerinckii SBP2-HB株の分子遺伝学的解析を行った。ゲノム解読されたブタノール生産性Clostridium属細菌(C. beijerinckiiC. acetobutylicumC. saccharobutylicum、およびC. saccharoperbutylacetonicum)のABE発酵系の遺伝子をKEGGから取得して代謝経路を推定したところ、ピルビン酸からアセチルCoAの生成にはpflBD , por , korABの3遺伝子が存在し、クロトニルCoAからブチリルCoAの生成にはfabVbcdが関わる2経路の存在が示唆された。その先のブチリルCoAの変換は、ブタノール生成と酪酸生成に分岐するが、前者はbdhAB、後者はbukatoAD (C. acetobutylicumではプラスミドに存在)が触媒している。ABE発酵系遺伝子のゲノム中での所在(染色体またはプラスミド)は菌種によって異なり、ABE代謝遺伝子の発現調節が異なることが推察された。一方、糖の取り込みには、特異性の無いホスホトランスフェラーゼ(PTS)システムのPtsS(C .beijerinckii NCIMB8052など)およびグルコース特異的なPTSシステムのPtsG(C. acetobutylicum DSM1731)が存在し、その相同性は低かった(Identity 31%, Similarity 76%)。SBP2-HB株では、AA添加条件でスクロース利用性が向上したことからptsSが存在すると推察される。現在、AA添加培地における、これらの遺伝子の転写発現解析を進めている。
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