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演題詳細

P-061:
深海環境から分離した細菌の分類学的研究
○宮崎 征行, 井町 寛之, 津留 美紀子, 酒井 早苗, 小林 徹, 出口 茂, 高井 研 海洋研究開発機構 miyazakim@jamstec.go.jp
深海環境には超高熱性細菌(122℃で生育)や絶対好圧性細菌(大気圧では増殖できない)といった、普段我々が生活している環境からは想像し得ない場所に好んで生息している微生物が存在する。このように深海の微生物は陸上の微生物とは異なる性質を持つことから、新たな発見や未だ発見されていない性質や特徴を持つものとして期待されている。そこで我々は新たな培養手法を用いて、これら未知微生物の分離培養を目的として研究を行っている。本発表では、深海生物や海底下のコアサンプルから培養された2種類の細菌の菌学的特徴について発表を行う。
 最初の分離株は富山湾の深海に生息しているオオグチボヤを分離源として分離した。本分離株の分離・培養には、寒天培地の代わりにナノファイバー構造のセルロース多孔質体を培地の固化成分とする新規固体培養法を用いた。このセルロースプレートに唯一の炭素源としてセルロースのみとなるように培地成分を染み込ませサンプルを播いたところ、細菌の増殖に伴いプレート表面に小さな穴が空き、微生物の増殖とセルロース分解能を有することが確認された。本分離株の系統学的位置は Gammaproteobacteria 綱, Oceanospirillaceae 科に属するが既知種とは16S rRNA遺伝子の相同値が90%しかなく、新属新種として提案する予定でいる。
 もう1つの分離株は2006年及び2012年に下北半島沖で地球深部掘削船「ちきゅう」を用いて採取され、海底下0.42 mbsfと1,900 mbsfの掘削コアサンプルからそれぞれ1株ずつ分離した。掘削コアサンプルの培養にはDown-flowスポンジリアクターを用いた。Down-flowスポンジリアクターとは、本来下水処理で用いてきた技術であるが、それを応用し、連続的に培地を流す事により目的の微生物をスポンジ上に繁茂させる集積培養装置である。分離した2株の相同値は99.9%で同種であると認められ、分子系統学的位置としては Acholeplasma 属に近縁ではあるが、既知種との相同値が92%であることから、 Tenericutes 門に属す新科であると示唆された。
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