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演題詳細

P-062:
Total RNAseq法による生物集団構造とメタトランスクリプトームの同時解析
坪井 亜里沙1,2, 井藤賀 操1, 本郷 裕一2, ○守屋 繁春1 1理研 環境資源セ, 2東工大 院 生命理工
近年の著しい次世代シーケンサーの能力向上は、生物学分野の研究手法を一変させた。特に発現遺伝子を対象としたRNAseqは様々な手法が考案されており、様々な生物学的問題の解決に役立っている。
本研究では、従来PCR法を用いて行われてきたリボゾームRNAによる微生物集団構造解析を、このRNAseq法を用いたマッピングベースの手法によって代替すると共に、従来は多量に含まれるリボゾームRNAに隠れて同時に解析する事が難しかったトランスクリプトーム情報をも同時に解析する事を目指した検討を行った。
草津地方の酸性温泉河川でサンプリングされた河床バイオフィルムをターゲットとしてtotal RNAを調製し、それを鋳型として全RNAのcDNAライブラリーを構築した。このcDNAライブラリーをIllumina社のMiSeqにてシーケンスを行い、得られたリードをリボゾームRNAデータベースであるSilva release 108のRepSeqデータベースをレファレンスとしてマッピングした。さらに、マッピングされなかったリードをアッセンブルしたうえでコード領域を推定し、これをトランスクリプトームデータベースとしてバックマッピングを行う事で発現遺伝子のパターンの推定を行った。
サンプリングを行った河川は上流と下流でpHが異なる事から、これらのサンプル間で発現相違解析(DE解析)を行ったところ、複数のリボゾームRNAおよび発現遺伝子で大きな発現変動が認められた。そこでそれらの配列について定量PCRによる配列の存在量の定量を行い、マッピングによる定量値との比較を行った結果、リボゾームRNA・発現遺伝子いずれにおいてもその発現パターンは定量PCRとマッピングによる定量値との間で同じパターンが認められた。このことから、本法は定量性の高い微生物集団構造解析手段として用いられると同時に、発現遺伝子のパターンの把握が可能である事が明らかとなった。同時に、全サンプリングポイントよりウイルスの遺伝子が発現遺伝子として検出されており、プランクトン集団の消長に重要な影響を持つとされているウイルスの同時定量にも道を拓くと考えられた。
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