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演題詳細

P-064:
改良型MAPLEシステムを用いた太平洋低緯度海域のメタゲノム解析
○高見 英人1, 谷口 丈晃2, 荒井 渉1, 竹本 和広3, 守屋 勇樹4, 五斗 進5, 浜崎 恒二6 1海洋機構・資源, 2東工大院・生命, 3九工大院・情報, 4情報システム機構・統合データ, 5京大・化研, 6東大・大気海洋研 takamih@jamstec.go.jp
【目的】MAPLEは、KEGGモジュールの充足率(MCR)をもとに個別生物、微生物群集が持つ生理・代謝機能の評価を自動的に行う便利なシステムである。しかし、不完全なモジュールの機能評価やモジュールが充足された際の機能アバンダンス、その機能を担う生物種の多様性評価には対応できなかったため、改良型MAPLEシステムver. 2.1.0を開発した。本研究では、2011年から2012年にかけて南北太平洋亜熱帯域および赤道湧昇域への航海によって得られた複数のメタゲノム配列から、各海域の機能的な特徴づけを目的としてMAPLE ver. 2.1.0を用いた解析を行った。1)
【方法】白鳳丸による航海によって、南北太平洋と赤道域から得られた各3サンプルをサイズ分画により自由画分と付着画分に分けた計18サンプルを用いメタゲノムDNAを抽出した。抽出したDNAからMiSeqにより配列決定された300塩基以上の (paired-end)100~250万配列をMAPLEに供試し、KEGGモジュールに対するMCR,アバンダンス、リボソームタンパク質に基づく菌叢組成などを算出した。また、各海域で測定された環境データとの相関関係を調べるため、MAPLEで得られた結果を説明変数、環境データを目的変数として正準相関解析(CCA)を行った。
【結果】改良型MAPLEによって得られた機能のアバンダンスや機能を担う個別生物種の種類や割合を指標に用いることで、これまでは同じと解釈されていたMCRが100%となる機能モジュールのポテンシャルにも海域ごとに差があることが浮き彫りになった。また、自由画分と付着画分の違いを説明するため、この2つの事象と環境データを目的変数として、各モジュールのアバンダンスを説明変数として、CCA用い行ったところ、種々のアミノ酸合成や鉄、ニッケルなどのトランスポーターが自由画分と、真核生物が持つ葉酸の代謝に関与するC1ユニット相互変換モジュールが付着画分と相関することがわかった。
1) Takami H., Taniguchi T., Arai W., Takemoto K., Moriya, Y., and Goto S. (2016) An automated system for evaluation of the functionome: MAPLE version 2.1.0. DNA Res. 1-9. doi: 10.1093/dnares/dsw030
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