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演題詳細

P-066:
環境RNAを用いた微生物相解析:熱水活動域チムニーの場合
○武藤 久1, 高木 善弘2, 美野 さやか3, 宮崎 淳一2, 平山 仙子2, 澤山 茂樹1, 高井 研2, 中川 聡1,2 1京都大・院農, 2海洋研究開発機構 深海・地殻内生物圏研究分野, 3北海道大学大学院 水産科学研究院 mutou.hisashi.78w@st.kyoto-u.ac.jp
深海底熱水活動域は、噴出熱水に含まれる化学物質を利用する化学合成独立栄養細菌を基盤にする独自の生態系を育むとともに、噴出熱水中に含まれる高濃度の金属成分は海底に大規模な熱水鉱床を形成することから大きな注目を浴びている。深海底熱水活動域に形成されるチムニーは、熱水中の鉱物などが析出した煙突状の構造物であり、その構造や鉱物組成・チムニー内外の環境は、噴出する熱水と周辺海水の影響を強く受け複雑に変動する。特に熱水・海水双方の影響を強く受けるチムニー表層域には、物理化学的に極めて多様かつダイナミックな環境が形成され、それに応じて多様な微生物が高密度に生息していると考えられている。 実際過去に行われたチムニーに生息する微生物のDNAを用いた微生物相解析では、常温性から超好熱性まで極めて多様な微生物が同所的に優占して検出されている。しかしながら、それらの解析で検出された微生物が、本当に環境中で活動しているか、あるいは死菌や休眠細胞であるかは不明である。ダイナミックに変動する環境において活動的な微生物の種類や多様性を調べるには、RNAを用いた解析が有用であると考えられるが、深海底熱水活動域とくにチムニー表層域における微生物群集をRNAを用いて解析した研究例は大変少ない。 そこで、まずチムニー表層に生息しているゴカイの巣(多様な微生物が生息することが知られ、サンプリングが比較的容易)からDNAおよびトータルRNAを抽出し、16S rRNA遺伝子の増幅(必要に応じて逆転写)の後に次世代シーケンサーで解析した。その結果、DNAを用いた解析よりも、RNAを用いた場合において、中等度高熱菌や化学合成独立栄養細菌が優占して検出されるなど、環境中の微生物活動をより反映していると考えられる結果が得られた。 次に、チムニー構造物の表層試料からRNAを用いた微生物群集構造解析を行うこととした。ところが、既存の様々なRNA抽出方法を用いたが、いずれも解析に必要な量と質のRNAを調整することができなかった。チムニーを構成する鉱物と培養微生物細胞を混合し、RNAが調整できなかった原因およびその対策について検討したので紹介する。
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