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演題詳細

P-068:
滑走性マイコプラズマMycoplasma mobileの運動機能解明に向けた大規模ゲノムクローニング
○大盛 佐和子1,2, 木村 信忠1,2, 柿澤 茂行2 1筑波大・院生命環境, 2産総研・生物プロセス s-omori@aist.go.jp
微生物は多数の遺伝子が連動して発現する機能を持っており、感染性・病原性・運動性・代謝能などが挙げられる。これらの機能を解明することは微生物学の発展に寄与すると考えられるが、多数の遺伝子を含む巨大ゲノム断片を扱う困難さゆえ、その手法は限定されていた。この問題の克服のため、本研究ではゲノムサイズが極めて小さく、全ゲノム移植に唯一成功した細菌であるマイコプラズマ属細菌の巨大ゲノム断片を操作する技術を確立することで、その機能を解明することを目的とした。材料としては滑走するマイコプラズマであるMycoplasma mobile を用いた。M. mobile の全ゲノムを酵母内にクローニングしたのち、それを滑走しないマイコプラズマであるMycoplasma capricolum へと移植し発現させることで、滑走運動に関わる遺伝子の特定と滑走機構の解明を目指す。そのためにM. mobile の全ゲノムクローニング技術を確立した。 クローニングのためのベクターは、酵母人工染色体(YAC)ベクターに大腸菌の複製起点や選択マーカーなどを付与した。インサートに用いるM. mobile のゲノム抽出の際には、ゲノムの断片化を最小限に抑えるため、ゲルの中に包埋した菌体をプロテアーゼ処理により溶解することによってゲノムDNAを得た。その後、ベクターとマイコプラズマゲノムを酵母内に導入し環状化させた。 形質転換後に得られた酵母のコロニーを用いて、ベクターとゲノムのつなぎ目部分のPCRを行い、導入したゲノムの存在を確認した。次に、マルチプレックスPCRにより、挿入断片上の複数の箇所を同時に増幅することで、挿入断片がM. mobile ゲノム由来の目的配列であることを確認した。さらにパルスフィールドゲル電気泳動を行い、ゲノムサイズを確認した。これらの結果、複数のクローンにおいてM. mobile の全ゲノム領域のクローニングに成功していると思われた。今後、クローニングした配列の全ゲノムRe-sequencingを行うことで塩基配列を確認したのち、M. capricolum へのゲノム移植を行う予定である。
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