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演題詳細

P-069:
GeneFISH法を用いて富士山地下水を対象に脱窒菌の機能遺伝子をシングルセルレベルで検出する試みII
○桝田 卓, 永翁 一代, 加藤 憲二 静岡大・院理 masuda.suguru.15@shizuoka.ac.jp
[経緯] 継続的な窒素肥料の施肥によって引き起こされる地下水の硝酸汚染は人体に与える影響から問題視される。硝酸汚染を改善する方法として現場環境中の微生物による脱窒機能の活用が考えられる。脱窒を担う細菌の数を精確に見積もることは活性の推定に繋がり、更にはその活性を高める方策を考える手懸りとなるだろう。しかし、その機能を担う細菌は様々な分類群に亘って存在するため脱窒細菌の数の精確な定量は難しい。私たちは顕微鏡下で機能遺伝子を持つ細菌細胞をシングルセルレベルで検出するgeneFISH法を脱窒細菌の亜硝酸還元酵素遺伝子nirSへ適用することを試みている(第30回大会時にはPseudomonas stutzerinirSを約60%検出)。
[今回の進展] 硝酸汚染が確認される富士山地下水中のnirSを対象とした次世代シーケンシングを行い、地下水中の脱窒細菌群集を推定した。次にその中で優占したnirSに最も近縁な配列を持つモデル脱窒細菌を抽出し、geneFISHへの適用条件の検討を行った。geneFISH法ではプローブを透過させるための細胞壁処理が遺伝子検出のカギとなる(プローブ長は426 bp)。地下水中に存在するnirSの1つのクラスターを代表するP. stutzeriでは細胞壁処理にproteinase Kが有効であり、nirSを持つ細胞を68.9%検出することに成功した。またP. stutzeriとは異なるクラスターを代表するParacoccus denitrificansではzymolyaseを用いることでnirSを持つ細胞を15.9%検出した。さらに制限酵素によるプローブの断片化によって膜透過を容易にすることを試みた。断片化プローブを用いたgeneFISHにおいてもnirSを持つ細胞を検出可能であったが、その検出率は非断片化プローブよりも低い結果となった。断片化したことによりターゲットへの結合度合いに変化が生じたことが考えられる。
[今後の展開] 本研究においてP. stutzerinirSを約7割検出することができた。地下水試料へのgeneFISHの適用にはさらなる検出率の向上が必要であり、細胞壁を破壊する酵素の検討やハイブリダイゼーション条件(ホルムアミド濃度や温度等)の調整が必要となるだろう。
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