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演題詳細

P-074:
w/oエマルションを利用したナノカルチャー技術の開発
○松倉 智子, 横井 妙子, 野田 尚宏 産総研・バイオメディカル matsukura-satoko@aist.go.jp
【目的】w/o(water-in-oil)エマルションは油相内に水が粒子となって分散している分散系溶液である。w/oエマルションは近年、次世代シークエンサーのライブラリー作製やデジタルPCRなどに利用されている。これらの技術で利用されるw/oエマルションはナノスケールで作製される場合が多く、その微小反応場においてPCRなどの酵素反応を効率的に行うことができる。数万から数十万のエマルションを一度に作製し、その一つ一つのエマルションにおいて反応を行うことができるためハイスループットな反応場として活用されている。長時間安定的に形態を保持できるw/oエマルションを作製することができれば、ナノスケールの微生物培養器としての利用も可能である。本研究では、微生物培養用の培地を水相として選択し、それを油相に分散させたw/oエマルションを作製する。さらに、数日から数週間の長期にわたって安定的に保持できるようなw/oエマルションを利用したナノカルチャー技術の確立を目指す。確立したw/oエマルションナノカルチャー技術を用いて、大腸菌や土壌由来微生物の培養を行った。【方法】水相に用いる微生物培養用培地としてはLB培地を選択し、油相に分散してw/oエマルションを作製した。LB培地の濃度を変化させて、作製されるw/oエマルションの安定性を評価した。さらに、大腸菌培養液や土壌由来微生物懸濁液を適宜希釈し、LB培地と混合したのちに油相に分散させてw/oエマルションを形成した。数日から2週間程度の培養後にw/oエマルションを観察し、微生物の増殖の有無を評価した。【結果・考察】LB培地を水相として用いたw/oエマルションは1~2週間程度、安定的に保持されることがわかった。w/oエマルション内で大腸菌を培養できることもわかった。また、培養開始から1週間程度経過したw/oエマルションから大腸菌を回収し、LBプレートで再培養したところコロニ―の形成を確認したことから、w/oエマルション内で培養した微生物を生きた状態で回収できることがわかった。土壌由来微生物を同様に培養した結果、複数のエマルションにおいて微生物の増殖を確認できた。w/oエマルションナノカルチャー技術はハイスループットなシングルセル培養技術として利用できることが示唆された。
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