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演題詳細

P-075:
微生物を自動的に“捕え”て“分離”する革新的分離培養手法
○植田 雄人1, Jung Dawoon2, Tandogan Nil3, Goluch Edger D3, 金田一 智規1, 大橋 晶良1, 青井 議輝1,2,3 1広島大・院工, 2広島大・サステナセンター, 3NortheasternUniversity
圧倒的多数の環境微生物は従来法では培養できない。これまでも微生物の獲得を目指した分離培養手法が考案されてきたが、その数は著しく少ない。それ故に、新しいコンセプトに基づく分離培養手法の開発は、従来の方法論に強く依存してきた今日の状況を打開する可能性がある。そこで、我々はナノメートルオーダーの成形技術を活用し、微生物の獲得に不可欠な、分離から培養までを自動的に行う分離培養デバイスを開発した。本研究では、環境微生物を自動的に分離し、培養するという新しいコンセプトに基づく分離培養デバイスを用いて、微生物を獲得する新規手法を開発すること、及び実環境サンプル(土壌)を本デバイスに適応し、分離培養が可能かを実証することを目的とする。本デバイスは培地が充填されているフードチャンバーと外環境へと繋がる細い管(ナノチャンネル)によって構成されており、環境中の微生物はナノチャンネル入口付近で増殖を始め、フードチャンバーに向かってナノチャンネル内を一列に分裂しながら進み、最終的にフードチャンバー内で検出可能レベルまで増殖し、分離培養を可能にするという原理である。実験方法として、まず、本デバイスの入り口部位に土壌由来の環境サンプルを注入し、適宜顕微鏡を用いてフードチャンバー部位での微生物の増殖の可否を確認した。微生物が増殖していた場合、チャンバーから菌体を採取し、平板培養、液体培養法を用いて2次培養を行った。2次培養で菌体の増殖を確認した後、菌体を分離し、RFLP法によりチャンバーごとに菌体が単一種、あるいは複数種存在しているかを判断した。その後16S rRNA遺伝子のDNAシーケンス解析を行った。顕微鏡を用いて本デバイス内部を観察したところ、ナノチャンネル入口付近で集合する菌体、ナノチャンネル内部で分裂する菌体、及びフードチャンバー内での菌体の増殖を確認した。また、土壌中の複数の微生物から、ナノチャンネルを介すことで、獲得する分離株を2-3種類に限定して分離培養できた。さらに平板法との16S rRNA遺伝子に基づく比較解析において、平板上で出現した菌体と異なる種の獲得、並びに多様性の高い菌体を獲得した。このことから、新規手法を用いて土壌サンプルの分離培養に成功し、他の環境サンプルを本デバイスで獲得可能であることが示唆され、本手法は従来の方法論に代わる新たな分離培養手法として確立できる高い潜在性があると言える。
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