Imgheader01

第31回大会ホームページへ

演題詳細

P-076:
病原性フザリウムの共培養による土壌病害の発病抑止性に関わる土壌生物性の評価法の検討
○三星 暢公1,3, 紀岡 雄三1, 野口 勝憲2, 浅川 晋3 1片倉コープアグリ株式会社 筑波総合研究所, 2片倉コープアグリ株式会社, 3名古屋大・院生命農 masahiro_mitsuboshi@katakuraco-op.com
 作物の生産現場において土壌病害は収量低下の原因の一つである。中でも土壌伝染性フザリウムは被害を及ぼす作物の種類が多く、防除が困難である。一方で、土壌病害の発生が少ない発病抑止土壌が知られており、土壌理化学性以外に土壌生物性が抑止性の要因として考えられているが、土壌の発病抑止性に関わる実用的な生物性評価法はない。そこで、圃場における土壌病害の発生可能性の診断を目指し、発病抑止性に関する土壌生物性の評価方法を検討した。具体的には、希釈した土壌懸濁液と病原性フザリウムを共培養し、フザリウムの増殖程度を評価した。一般的に、希釈倍率が高くなると土壌懸濁液中の微生物数が少なくなりフザリウムが増殖しやすくなり、また、懸濁液中の微生物の種類によりフザリウムの増殖抑制程度が異なると考えられるため、本方法は土壌中の微生物数、活性、拮抗力を総合的に評価できると考えられる。
 土壌を101 ~106 倍に希釈した懸濁液を塗抹した寒天プレートの中央へ予めフザリウムを培養した寒天片を置き、一定期間培養後フザリウムの増殖程度を測定し、土壌懸濁液を接種しない場合と比較した。フザリウムの増殖程度の評価はコロニーの実面積、フザリウム寒天片からコロニーの外周までの伸長距離(最大・最小)及びコロニー全体を楕円と考えた場合の面積を計測することにより行った。コロニーの実面積と楕円で近似した面積により評価した場合、フザリウムの増殖程度に差はなかった。コロニーの伸長距離で評価した場合、実面積と比較して希釈倍率の変化に対する変動が緩やかであったため、希釈段階ごとのフザリウムの増殖程度の微細な変化をよりよく評価できると考えられた。
 本方法により、有機質肥料によるフザリウムの増殖抑制程度を評価した。蒸製骨粉、牛糞堆肥(ソイールパワー2号)、微生物資材(ビオ有機)では、牛糞堆肥と微生物資材がフザリウムの増殖を抑制した。次に、これらの資材を混合した土壌へ病原性フザリウムを接種し、ホウレンソウの栽培試験を行った。ホウレンソウの発病度に差がみられ、本方法により評価した栽培後土壌のフザリウム増殖程度とホウレンソウの発病度との間に有意な相関関係が認められた。
 以上の結果から、本方法により土着の微生物によるフザリウムの増殖抑制程度が評価できると考えられ、発病抑止性に関わる土壌生物性を評価できる可能性が示唆された。
PDF