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土のミクロ団粒内に見られる異形の細菌細胞群:その3 ナノ微生物?
土のミクロ団粒内部には、径数ミクロン以下の毛管孔隙が豊富に存在し、細菌など小型微生物の安定した居住空間として注目される。こうしたミクロ団粒の超薄切片を透過型電子顕微鏡により観察すると、さまざまな異形細菌像がみられることを、先の本学会大会(2014年,2015年)で報告した。それらはいずれも、人工培地で培養した通常の細菌細胞の形態とは著しく異なるものであった。この様な異形の細菌細胞群とは別に、土のミクロ団粒内には、通常の細菌細胞にくらべ、著しく微小な微生物様物体の存在がしばしば認められる。その大きさは200nmを下回り、その形態もさまざまである。微細なため内部構造は不明だが、ときには細胞分裂様の外観を呈することもある。同様な微小な微生物様物体は、1989年Folk(文献1)により鉱物表面で観察され、「nannobactera(その後nanobacteriaと呼ばれる)」として報告された。その後、人体・岩石・海洋などでも、同様な「ナノ微生物」様物体が観察された。これらが「生物か、それとも鉱物微小結晶か?」をめぐり、盛んに議論されてきたが、現在なお決着をみていない。本報告では、透過型電子顕微鏡観察によりミクロ団粒中に認められたさまざまな「ナノ微生物」様物体の形状を示す。材料と方法 材料:東北大学川渡草地圃場、仙台市広瀬川霊屋橋付近沿岸から採取した土壌団粒。試料作製法:ミクロ団粒を0.1%glutaraldehydeで固定後、寒天内に包埋した。試料を含む寒天ブロックを1%osmium tetroxideで固定、2% uranyl acetateで処理脱水し、Epon 812に包埋した。電子顕微鏡観察:樹脂試料から超薄切片を作成し、2% uranyl acetateとsaturated lead citrateで染色後、日立EM, H-500を用い、75KVで観察を行った。結果 「ナノ微生物」様微小物体は、ミクロ団粒超薄切片で観察される一次鉱物のシルト片の面上や二次鉱物である粘土凝集体の切断面中に、多様な形態で単独、または群がって存在することが認められる。これらの微小体が、果たして「ナノ微生物?」かどうか、今後まず検討すべき課題である。文献1) Folk, Robert L. (1997). "Nanobacteria: surely not figments, but what under heaven are they?". Natural SCIENCE. Retrieved 2008-12-20.R.Folk 1989,