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演題詳細

P-080:
新規有機物資材を用いた土壌還元消毒における細菌群集構造の変化
○李 哲揆1, 飯田 敏也1, 村元 靖典2, 渡辺 秀樹2, 中保 一浩3, 大熊 盛也1 1理研・BRC, 2岐阜県農試, 3農研機構・中央農研 cholgyu.lee@riken.jp
トマト青枯病は植物病原細菌Ralstonia solanacearumによって引き起こされる土壌病害である。現在、防除法として抵抗性台木の利用やクロルピクリンなどのくん蒸剤による土壌消毒などが行われているが、防除効果や環境に与える影響などが問題になっている。土壌還元消毒法とは土壌中に有機物を施用後、水を張り還元的な状態を保つことで好気性の病原菌を死滅させる消毒方法である。これまでフスマ等を利用した土壌還元消毒が利用されているが、圃場の深層部に分布する青枯病菌を消毒できないことから十分な防除効果は得られていない。我々はアミノ酸/核酸発酵副生物である糖化ケーキおよび糖蜜の新規資材を用いた土壌還元消毒の効果を検討するともに、安定化基盤の確立のための土壌微生物群集構造の解析を行った。消毒は岐阜県農業技術センター内のビニールハウスにおいて、糖化ケーキ(2t/10a)および糖蜜(0.6 %)を圃場に混和、湛水(150L/m2)後、ビニールで3週間被覆することにより実施した(対照は無施用)。経時的に2つの深度(17-33cm、33-50cm)から土壌を採取し、DNAを抽出後、原核生物の16S rRNA遺伝子に特異的なプライマーを用いてPCR増幅した。増幅産物はGS Juniorを用いてアンプリコンシークエンスによる菌叢解析に供した。また消毒期間中の青枯病菌密度は発病性の青枯病菌に特異的なプライマーを用い、DNAを希釈するMPN-PCR法を用いて見積もった。土壌抽出DNA量と青枯病菌密度は糖化ケーキ施用区で還元消毒実施後3日目に上層、下層ともに著しく減少していた。また糖化ケーキ、糖蜜吸着資材施用区では消毒後の土壌から青枯病菌がほとんど検出されなかったことから、本資材を用いることで土壌深層の消毒の有効性が確認された。菌叢解析の結果、群集構造は上層と下層で異なるものの処理区間での有意な差は見られなかった。一方、原核生物の多様性は消毒期間を通じてほとんど変化はなかったが、有機物施用後にはBacillalesが増え有機物分解に関与していることが示された。また青枯病菌の消長と負の相関を示す細菌種がいくつか検出され、これらの細菌は還元消毒に影響して、消毒成否の指標となると考えられた。
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