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演題詳細

P-082:
土壌環境におけるBurkholderia属細菌の生育段階と土壌高発現遺伝子の転写変動パターンの関係性
○田上 諒, 西山 依里, 大坪 嘉行, 永田 裕二, 津田 雅孝 東北大・院生命
細菌研究は主に実験室系で行われているため、細菌が実際の棲息環境でどのような生きざまをしているのかは未だ不明な点が多い。本研究室では、モデル土壌細菌Burkholderia multivorans ATCC 17616株の土壌環境適応戦略を明らかにする目的で、IVET (in vivo expression technology)を用いて土壌特異的に発現する遺伝子を同定してきた(Nishiyama et al. Environ. Microbiol. 2010)。しかし、当該遺伝子が土壌での細胞の増殖・維持・死滅のどの段階で重要かはわかっていない。そこで本研究では、これら遺伝子の土壌での経時的な転写パターンを明らかにし、それを液体培養時の転写パターンと比較することにした。
滅菌土壌へATCC 17616株を106 CFU/g soilになるように植菌し、継時的にCFU測定とRNA抽出を行った。抽出したRNAは精製・逆転写後、IVETで同定されていた遺伝子の転写量をqRT-PCRを用いて解析した。同様の実験をコハク酸添加最小液体培地でも行い、土壌での場合と比較した。
土壌に植菌したATCC 17616株のCFUは、植菌後1-2日間の誘導期段階の後、3-4日目で最大菌密度(5 x 108 CFU/g soil)に達し、約1か月間維持したが緩やかな減少傾向が見られた。一方、検討した遺伝子の土壌での転写は、生育段階で異なっていた。例えば、フェニル酢酸分解初発酵素遺伝子の転写量は増殖初期に顕著に発現していたのに対して、アントラニル酸ジオキシゲナーゼをコードするandAcの転写量は菌密度が最大に達した時点で最大となり、それ以降徐々に減少した。また、土壌でのandAcの転写は液体培養の場合と比べて、量的にも多いとともに生育段階での様式も異なっていた。andAcは土壌における増殖期から定常期に変化する時期に多く転写されていることから、利用しやすい炭素源が枯渇した際のエネルギー源として土壌に何らかの形で存在するアントラニル酸類縁物質を利用している可能性があった。現在、土壌における遺伝子発現の網羅的な解析を進めている。
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