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演題詳細

P-083:
多環芳香族炭化水素の混在のなかで起こるSphingobium barthaii sp.strain KK22による生分解についての解析
○井澤 陽, カナリー ロバート 横浜市大・大学院 n165252d@yokohama-cu.ac.jp
  多環芳香族炭化水素(PAHs)は環境汚染物質として広く知られている。このPAHsは石油やクレオソートに代表される非水性な液体に含まれている。 PAHsは多くの種類が存在するが、その中でもベンゾピレンbenzo[a]pyrene(BaP)は難分解性であり、生体にとって発がん性も示されている。しかし、このBaPの微生物による生分解については明らかになっていないことが多い。一方、BaPと同じくPAHsであるphenanthrene(PHE)は特定の状況下において生分解できることが知られている。本研究ではBaPとPHEが混在する状況下で生分解にどのような影響があるのかを調べた。
  今回、BaPがPHEの生分解に及ぼす影響を知るためにSphingobium barthaii sp. strain KK22(KK22)による生分解実験を行った。ガスクロマトグラフィー(GC)による定量解析の結果、 48時間の生分解実験においてBaPとPHEが混在する培地ではPHEの生分解が阻害されることが示された。さらに、LC-(-)MS/MSで定量解析を行った結果、BaPとPHEが混在する培地では7日間経過時にPHEのみの培地に比べて10倍から100倍多い濃度でPHEの代謝産物がサンプル内に残っていたことから、PHEの生分解がBaPによって妨げられていたことが明らかになった。
  また、この研究でKK22はPHEの共存に影響を受けずにBaPを生分解することができることが明らかになった。このBaPの生分解によって生じた5つの代謝産物をLC/ESI-MS/MSにより解析し同定した結果、7,8- 、9,10-dihydroxybenzo[a]pyreneの両方あるいは一方の中間代謝産物を経て、それぞれオルト開裂、メタ開裂が起こり1(2)-hydroxypyrene-2(1)-carboxylic acidsに代謝されることが示された。本実験により、PHEの生分解がBaPとの競争的阻害によって妨げられることが結論付けられた。
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