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下水汚泥中に存在する難培養高度好熱菌に関する研究
[背景]
鹿児島市では、下水処理過程で生じる下水汚泥を80°C前後で進行する超高温堆肥化法によって堆肥に変換している。先行研究において、原料汚泥および堆肥よりThermaerobacter属およびCalditerricola属の高度好熱菌が分離されているが、次世代シーケンサーによる網羅的な細菌群集構造解析結果では、高度好熱菌の存在比が非常に少ない(Tashiro et al., J Biosci Bioeng, in press)。よって、原料汚泥に生息する高度好熱菌の由来や超高温で堆肥化が進行する機構は不明である。本研究では、特に好熱菌に着目し、異なる条件で原料汚泥の高温集積培養を行い、細菌群集構造解析による高度好熱菌の調査を目的とした。
[実験方法]
鹿児島市で常温にて処理された原料汚泥(消化汚泥)を分離源とし、堆肥とCYS液体培地を混合した培地を用いて異なる条件で高温(70-75°C)にて集積培養を行った。集積培養液からDNAを抽出した後、16S rRNA遺伝子部分領域のPCR増幅を行い、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)およびMiSeqによる細菌群集構造解析を行った。さらに、固体培地を用いて 、高温集積培養液からの高度好熱菌の分離を試みた。
[結果]
DGGE解析の結果から、同じ分離源を用いた場合でも集積培養条件により細菌群集構造が大きく異なることが明らかになった。また、DGGE解析で最も多様であった集積培養条件下の主要細菌は、MiSeq解析でも主要であったことから、両解析法により得られた結果に相関があった。さらに、高温で集積後200種以上のOTUが確認され、特にFirmicutes門の存在比が高かった。以上のことから、常温で処理された消化汚泥中に多様な高度好熱菌が存在し、高温で集積可能であることが示唆された。さらに、集積培養液から高度好熱菌の純粋分離を試みたところ、固体培地ではコロニーの形成が確認できなかった。よって、集積された高度好熱菌は液体培地では増殖するが、固体培地で増殖できない難培養高度好熱菌であると考えられた。現在、これらの難培養高度好熱菌を純粋分離するために、顕微蛍光マニピュレータを用いた1細胞液系分離を試みている。