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演題詳細

P-085:
茶園土壌に添加したササ・ススキの分解に伴う土壌理化学性と微生物群集構造の変化
鮫島 玲子1, ○園田 咲2, 浅井 辰夫1, 高橋 冬実3, 小杉 徹3 1静岡大・学術院農, 2静岡大学・院農, 3静岡県・農林技術研究所 sameshima.reiko@shizuoka.ac.jp
【目的】静岡の「茶草場農法」は、茶草(ササやススキを中心とした草本植物)を茶樹の畝間に施用する。茶草場農法により生産される茶葉は高品質とされ、茶草の土壌改良効果や肥料効果が予想される。ただし、異なる種類の茶草は土壌に与える影響も異なることが懸念される。そこで本研究では、茶園土壌の理化学性と微生物群集構造に与える影響をササとススキで比較するため、実験室内で土壌培養試験を行った。【実験】茶園に設けた試験区のうち茶草64 kg/10 a、化成肥料40 kg-N/10 aを施用している区の畝間からサンプリングした土壌を用いた。1 Lポリビーカーに深さ10 cmの土壌を詰め、含水比を0.5に調製した。これにササまたはススキ25 gを加えてよく混合したササ区、ススキ区、茶草を加えないコントロール区の3種類を3連で作成した。25℃の暗室で培養し、適宜滅菌水を加えることで含水比を維持した。半年後、1年後にそれぞれ茶草の分解率、最大容水量、無機態窒素量、可給態窒素量、微生物数を調査した。また16SrDNA、18SrDNAを対象としたPCR-DGGE解析を行った。【結果と考察】分解率は半年後、1年後いずれもススキよりササが高かった。最大容水量は、コントロール区で減少し、ササ区、ススキ区では増加したが、ササ区でより大きく増加した。NH4+量はどの区も半年で減少した。NO3-量は3区とも増加したが、生成したNO3-量はコントロール区、ササ区、ススキ区の順に高かった。可給態窒素量もササ区・ススキ区でコントロール区より高かった。茶草施用は硝化を抑制し窒素の有機化を促進すると考えられた。細菌数はササ・ススキ区で半年後に急激に増加し、その後減少した。糸状菌数はササ・ススキ区で半年後に少し増加し、その後ススキ区で減少したが、ササ区で急激に増加した。コントロール区では細菌・糸状菌数いずれも減少した。微生物群集のクラスター分析では細菌・糸状菌群集とも、1年後にコントロール区がササ・ススキ区とクラスターが分かれる傾向にあり、茶草区特有の群集構造が形成された。また糸状菌では、担子菌類( Auricularia属)に相同性を示すササ区特有のバンドや、 Phialosimplex sp.に相同性を示すコントロール区に特徴的なバンドが見られた。本研究室では窒素過剰施肥の茶園より脱窒活性の高い Phialosimplex属近縁の糸状菌が分離されているが、茶草施用により増殖が抑制される可能性が考えられた。
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