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不耕起栽培畑地土壌における耐水性団粒の微生物群集メタゲノム解析
不耕起栽培は,気候変動を緩和する土壌炭素隔離につながる可能性があるので,近年関心が高まっている.土壌の炭素隔離能は,耐水性団粒の含有量と関係していることや,団粒は土壌微生物や土壌有機物にとって安定な環境を提供していることが指摘されてきた.しかし,耐水性団粒を微生物学的に特徴付ける研究はまだ十分にはなされていない.そこで,本研究では,分子遺伝学的手法を用いて,農地土壌管理に関連する耐水性団粒内の微生物群集構造を分析することを目的とした.供試土壌は,茨城大学農学部附属フィールドサイエンス教育研究センター内の試験区{耕耘方法2水準(耕起/不耕起),夏季ダイズ・冬季裸地,無施肥区を3反復で設定:2003年より継続的に耕起/不耕起管理}の表層0-10 cmから採取した.採取は播種後(2015年8月),収穫後(同11月),裸地期間中(2016年1月)に行った.土壌団粒(耐水性団粒)は水中篩別法を用いて,粒径2-8 mm,0.25-2 mm,0.1-0.25 mm,<0.1 mmの4画分を調製した.なお,<0.1 mmの画分は遠心処理で回収しているため,水中で粒子から遊離した微生物も含まれた.微生物群集構造は,各画分試料からDNAを抽出し,細菌16S rRNA及び菌類のITS領域を標的としたPCR-末端制限断片長多型(T-RFLP)解析を行った.さらに,細菌16S rRNA遺伝子のアンプリコンシーケンスのメタ解析を行った.耐水性団粒のサイズ組成は,粒径2-8 mm団粒の割合が不耕起区土壌では安定して高く(約30%),耕起区土壌では季節変動が見られた.対照的に,粒径0.25-2 mm の団粒の割合が耕起区土壌で高かった.T-RFLP解析から,不耕起区土壌の細菌及び真菌類の群集構造は,耕起区土壌とは明確に異なった.さらに,16S rRNA遺伝子のメタ解析では,全ての粒径画分において,不耕起区土壌の方が耕起区土壌よりも細菌群集の多様性が高かった.不耕起区土壌において,粒径の異なる団粒中の細菌群集を綱レベルで比較すると,<0.1 mmの画分ではProteobacteriaとActinobacteriaが増加する傾向にあり,不耕起区における団粒サイズと細菌群集には関連があると推察された.耕起区土壌では,8月から11月にかけて,粒径0.1-0.25mmの画分でProteobacteriaの割合が増加し,Acidobacteriaが減少する傾向が見られた.以上より,耕起/不耕起という農法の違いは,耐水性団粒の粒径サイズの経時的変化や団粒内の微生物群集の構造と動態に影響を与えることが示唆された.