Imgheader01

第31回大会ホームページへ

演題詳細

P-089:
春期ブルーム中の親潮黒潮移行域において活発に細胞分裂する細菌群集(Active growing bacteria: AGB)の組成比較
○片岡 剛文1,2, 山口 晴代2, 桑田 晃3, 河地 正伸2 1福井県大海洋, 2国環研, 3東北水研 kataoka@fpu.ac.jp
従属栄養性細菌は溶存態・粒子状有機物を利用して群集を維持しているため、バイオマスプールとして生物地球化学的な物質循環における重要な構成要素である。細菌の群集組成は海域や環境により異なるが、植物プランクトンの現存量との関係が知られており、特に、特定の系統群が植物プランクトンのブルーム時に優占する例が報告されている。近年では次世代シーケンス法により細菌群集組成を網羅的に分析できるが、天然群集には死菌や休眠状態の細菌も含まれており、物質循環に貢献するような活発に細胞分裂する細菌(Active growing bacteria: AGB)についての知見は未だ少ない。ブロモデオキシウリジン(BrdU)はチミジン類似体であり、細胞分裂に伴って複製されるDNAに取り込まれるため、新たに合成されるDNAの標識となる。つまりBrdUを取り込ませた環境試料から免疫沈降法によりBrdUを含むDNAを選抜すること (BrdU immuno capturing: BIC)で、AGB由来のDNAを分析可能である。本研究では、AGB群集組成と植物プランクトンとの関係を明らかにするために、春期ブルーム中の親潮域と非ブルームの親潮黒潮移行域において、2水深(表層とクロロフィル極大)の細菌群集組成を16S rDNAのアンプリコン解析により比較した。BIC法により選抜されたゲノムDNA中の16S rDNAコピー数は、無選抜ゲノムDNAの5?10%を占め、全細菌群集の10%程度がAGBであることが示唆された。3連反復実験で共通して得られたOTUを分析したところ、365 OTU(92%相同性)が得られた。OTU組成は表層とクロロフィル極大層でよく類似したが、親潮域ではAlphaproteobacteriaとFlavobacteriiaに属する多様な系統群が優占し、移行域ではRhodobacteraceaが優占する違いがあった。得られたOTUの27%がAGBであり、優占するAGBの分類群は各観測点の無選抜細菌群集と類似していたことから、AGBと非AGBは遺伝子型レベルで異なることが示唆された。また、親潮域のAGBは他海域の植物プランクトンブルームで優占する系統群と類似しており、ブルームに特異的な組成である可能性が示唆された。
PDF