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演題詳細

P-090:
RNA-seqデータを活用した真核微生物群集構造の解明に向けた取り組み
○矢吹 彬憲1, 浦山 俊一2, 高木 善弘3, 西 真郎2, 横川 太一2, 荒井 渉4, 平井 美穂2, 藤倉 克則1, 布浦 拓郎2 1海洋研究開発機構・多様性, 2海洋研究開発機構・生命理工, 3海洋研究開発機構・Sugar, 4海洋研究開発機構・海底資源 yabukia@jamstec.go.jp
真核微生物は地球上の幅広い環境に生息し、様々な生態系において重要な役割を担っている。光合成性真核微生物(微細藻類)は、シアノバクテリアとともに外洋域におけるに重要な一次生産者として生態系を支える存在であり、また従属栄養性の真核微生物(原生動物や原虫類)も微生物ループにおける重要な構成要員であることが広く認識されている。海洋環境の変化が叫ばれ、またその持続的な利用が課題とされている現在において、海洋生態系構造を正確に理解することは重要な研究課題であり、海洋環境中における真核微生物の多様性や存在量、および環境中での役割のより正確な理解が待たれている。これまで真核微生物を対象とした群集構造解析は環境DNAを用いた解析が主流であった。本解析方法では、幅広い系統に属す真核微生物の存在を網羅的に検出することが可能であり、また存在量が少ない真核微生物の存在も検出できるという利点がある。実際に様々な環境において環境DNAを利用した解析が進められ、真核微生物の多様性や各種環境における真核微生物相に関する理解が大きく進んだことには論を俟たない。その一方で、マーカー遺伝子配列を環境DNAよりPCR法により増幅させる過程でその増幅効率に種ごと/グループごとに偏りが存在する可能性も指摘されており、各真核微生物の存在量の比較や得られた配列量に基づく環境中での機能・役割の推定には障害があることも知られていた。今回、我々は北太平洋の北緯約47度の4地点(それぞれ、東経160.0218°, 166.7472°, -1794263°, -151.4048°)において海洋表層水を採集し、それぞれにおいてRNAの抽出と次世代シーケンサーによる網羅的な配列収集を行った。得られた配列情報中からrRNA遺伝子配列を抽出し、それぞれの資料中に含まれる真核微生物相の推定を行った。また、得られたrRNA配列のリード数に着目し、各環境中におけるぞれぞれの真核微生物の存在比の比較も行った。発表では、RNA-seqデータに基づく群集構造解析の利点や今後の展望についても議論したい。
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