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演題詳細

P-098:
培養株から見えてくる淡水圏の浮遊細菌の特徴とその生態
○渡邊 圭司, 池田 和弘, 柿本 貴志, 見島 伊織, 高橋 基之 埼玉県・環科国セ
【目的】淡水圏の浮遊細菌には、世界中の湖沼や河川に普遍的に見られるクラスターが存在し、これらは淡水圏の物質循環において重要な役割を担っているものと考えられる。我々は、これまでに試水を平均粒子保持径0.7μmのガラス繊維フィルターでろ過し、ろ液をR2A培地から糖質を除いた培地MR2A培地に塗抹し、27℃で培養する方法で(SEAM)、日本の様々な湖沼や河川から未培養グループを含む多種多様な浮遊細菌群を分離培養することに成功してきた(PnecA、PnecB、PnecC、PnecD、GKS98、LiUU-5-340、IRD18C08、LimA、LimC、Luna1、Luna2およびFlavobacterium spp.など)。本研究では、これまでに得られた浮遊細菌の分離株を用いて、低温条件(5℃)での増殖特性、pHがアルカリ域(pH9.6)や通常の培養条件(pH7.2、MR2A培地、27℃)で増殖速度の比較検討、炭素源および窒素源の資化性試験等を行い、それぞれの浮遊細菌の分離株の特徴を調べることで、近年急速に普及している網羅的遺伝子解析では得られ難い、それらの生態に係わる基盤データを集積することを目的とした。【結果】Betaproteobacteria綱に属する浮遊細菌は(PnecA、PnecB、PnecC、PnecD、GKS98、LiUU-5-340、IRD18C08、LimAおよびLimC)、炭素源として有機酸に強く依存しており、糖質やアミノ酸はほとんど資化しなかった。低温条件(5℃)では、LimA、LimC、PnecC、LiUU-5-340に属する細菌が良好な生育を示し、低水温期にこれらの細菌群が優占する可能性が示唆された。GKS98に属する細菌は、中性域(pH7.2)よりもアルカリ域(pH9.6)で速い増殖速度を示した。PnecCおよびIRD18C08クラスターに属する細菌は、硝酸態窒素を唯一の窒素源として生育することが可能であり、この特徴が、河川においてこれらの細菌群が高頻度に検出される理由の一端であると推察された。【謝辞】本研究の一部は、科学研究費助成事業(若手研究[B]15K16122)の助成を受けて遂行したものである。ここに記して謝意を表する。
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