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演題詳細

P-122:
立川市の大気浮遊細菌の季節変動と生態系に与えうる影響
○植竹 淳, 當房 豊, 内田 雅己 国立極地研究所 juetake@nipr.ac.jp
大気中を浮遊する微生物の存在は昔から認識されており、微生物の地理的分布、人々の健康に大きな影響を与えていることは周知の事実である。しかしながら、これら大気浮遊細菌の日変動、季節変動となると世界的に見ても数例しか研究例がなく、実態がほとんどつかめていないというのが実は現状である。この原因は、シーケンス技術が発達していなかった為、多検体を分析できなかったことにあると思われるが、次世代シーケンサーによる多検体分析が可能となった今日では、サンプルさえ捕集できればその変動を詳細に追いかけることが容易に可能であり、生態系、健康といった要素と詳細に比較していくことができる。
そこで本研究では、立川市にある国立極地研究所の屋上で、2015年12月22日から2016年5月8日にかけて、深夜0時から翌0時までの24時間大気を採取(30l/min)し、計132サンプル(日)のバクテリア16S rDNAの群集構造の変化を明らかにした。
その結果、植物の葉緑体由来の16S rDNAが最も多く検出され、最大で全体の84%を占めた。葉緑体はスギやコナラ由来のものが多く、スギは2月末、コナラは4月中旬にピークがあることから、この多くが季節性のある花粉由来であり、立川の西方に位置する奥多摩の山地から中距離輸送を経て飛来してきたと推測された。これらの影響を除外すると、周辺の土壌由来と思われるRhodococcus属、Sphingomonas属、菌根菌であるMesorhizobium属の比率が高く、春先に明瞭な季節変化が見られた。このうちMesorhizobium属は3月初旬から比率が急激に増加し最も優占する種類となり、多変量解析の結果、気温、湿度、風向、風速などの気象パラメータよりも花粉の相対比率とよく関連していた。このことから植生の変化と連動して大気中に浮遊していることが示唆され、沈着後の土壌環境に影響を与えうる可能性がある。
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