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演題詳細

P-126:
マングローブ林土壌中のメタン生成菌群集が示す特徴的な機能
○新井 宏徳1,2, 吉岡 遼2, 花澤 俊祐2, Tuan Vo Quoc3, Tinh Tran Kim3, Jha Chandra Shekhar4, Dadhwal Vinay Kumar4, 間野 正美2, 白鳥 豊5, 犬伏 和之2 1国際農研・JSPS, 2千葉大・院園, 3カントー大, 4ISRO, 5新潟農試 hiroarai@affrc.go.jp
沿岸生態系は陸上生態系に匹敵する炭素貯留能を有するものの、温室効果ガスであるメタンの強力な放出源にもなり得ると想定されている。しかしそれにも拘わらず、その放出量は十分定量化されていない。そこで本研究では、沿岸生態系からの温室効果ガス放出支配機構を理解するために、マングローブ土壌からのメタン放出量とそれに関与する土壌微生物性を調査した。ベトナムのソクチャンおよびカマウにて、海岸線からの距離が異なる複数の地点、およびインドのスンダルバン調査地からマングローブ土壌および空気試料を採取し、複数の異なった条件 {好気条件(pH (H2O) 6.86~7.72)または嫌気条件(pH (H2O) 7.45~8.10)、あるいは異なる濃度の海水の添加処理(未希釈区・2倍希釈区・4倍希釈区・8倍希釈区・超純水区)}で室内培養した後、土壌微生物性を分析した。ソクチャンおよびカマウにおいては、海岸部にて、メタンフラックスおよび好気培養条件下でのメタン生成活性が比較的高かった。メタン生成活性は嫌気培養条件下のほうが好気培養条件下よりも低かった。添加した海水濃度が高いほど、土壌ECは高くなり、pHは低くなったが、メタン生成活性は4倍希釈海水添加区(EC 533 mS m-1, pH (H2O) 6.67)で、その他の区よりも著しく高くなった。PCR-DGGEの結果、インドとベトナム土壌で群集構造が異なることが示されたものの、同定された菌はいずれもHalobacteria網に属する高度好塩菌グループに分類された。これらの結果は、酸素の供給に伴い多量に生成された二酸化炭素や、降雨および湛水の流入によって土壌pHが低下したり塩濃度が調整されることで、局時的・局所的にメタン生成菌が高活性となる最適pH・塩濃度環境が生じ、メタンを多量に発生させている可能性や、マングローブ土壌のメタン生成活性は、土壌環境の還元度よりも、むしろpHや塩濃度に強く支配されている可能性を示している。今後の課題として、(1)よりメタン菌のDNA配列に特異的なプライマーを用いてメタン菌群集構造を評価すること、(2)酸素の供給に伴う粗大有機物の脱水縮合の促進にともなうメタン生成菌の基質量の増加の可能性の検討、(3)酸素供給に伴う嫌気的メタン酸化の阻害の可能性を検討することがあげられる。
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