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演題詳細

P-127:
人工水田土壌のメタン生成活性と微生物群集に及ぼす土壌構成要素の影響
○村瀬 潤, 前田 悠 名古屋大・院生命農 murase@agr.nagoya-u.ac.jp
【目的】土壌とは多様な要素からなる複雑系であり、各要素が土壌中の化学反応や微生物代謝に与える直接的な影響を個別に明らかにするのは困難である。本研究では水田の土壌構成要素が微生物の機能・生態に与える影響を解析することを目的として、土壌から構成要素を分離した後に再統合する人工土壌の作成を試みた。嫌気環境での有機物分解を対象として、人工土壌の微生物活性と形成される微生物群集に及ぼす土壌構成要素の影響を解析した。【材料および方法】愛知県農業総合試験場安城農業技術センターの水田土壌から土壌構成要素として土壌鉱物、植物遺体、腐植物質、微生物を分離した。定量値を参考にして分離した各要素を混合し、構成要素の組成が異なる人工土壌を作成した。調製した人工土壌に炭素源として稲わら粉末を0.6%(w/w)添加し、水飽和条件として密閉容器内で嫌気培養し、気相に放出されるCO2およびCH4の濃度を経時的に測定した。また、培養終了後の土壌に形成された微生物群集を16S rRNA遺伝子を対象としたPCR-DGGE、アンプリコンシークエンスにより解析した。【結果および考察】全ての要素を混合した人工土壌のCO2生成は、当初元の土壌の約20%程度しかなくCH4はほとんど生成しなかった。生成量の向上を目指して各要素および人工土壌の調製法を検討した結果、腐植物質、特にフルボ酸が微生物活性を大きく左右することが明らかとなった。また、腐植物質と鉱物を混合してから微生物を接種するまでに一定時間静置することで活性は増大し、最終的に元の土壌に匹敵するCO2およびCH4生成を示す人工土壌が作出できた。メタン生成系が確立した人工土壌の微生物群集は元の土壌に比べて極めて単純であり、Clostridiaが元の土壌では全体の7-11%を占めるのに対し、人工土壌では62-95%と高い優占度を示した。腐植物質を添加した土壌ではGeobacterMethanocellaの割合が減少した。一方、Anaeromyxobacterは腐植物質を添加し一定時間静置した人工土壌でのみ検出された。以上の結果から、腐植物質は鉄還元やメタン生成過程での微生物群集の構造やそのはたらきを左右する重要な土壌構成要素であることが示された。また、同じ機能を果たす微生物群の中に異なる環境条件に適応したグループが混在することで土壌機能の冗長性が維持されることが示唆された。
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