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演題詳細

P-134:
メタン酸化が駆動する水田の微生物食物連鎖の構造は根圏と非根圏で異なる
○日比野 優子1, 常田 岳志2, 大久保 卓2, 荒井 見和2, 林 健太郎2, 酒井 英光2, 長谷川 利拡2, 村瀬 潤1 1名古屋大・院生命農, 2農研機構・農業環境セ hibino.yuuko@g.mbox.nagoya-u.ac.jp
水稲根圏ではメタンの生成と同時に酸化も活発に起きており、水田からのメタン放出の制御に関わっている。水田土壌ではメタンの炭素がメタン酸化細菌以外の細菌や捕食者を中心とする真核微生物に利用される微生物食物連鎖の存在が示されているが、水稲根圏におけるメタン酸化微生物食物連鎖についてはこれまで知見がない。本研究では、水稲根圏および非根圏土壌におけるメタン酸化が駆動する微生物食物連鎖の存在および構造をDNA-SIP法により比較解析した。メタン酸化が活発になる幼穂形成期につくばみらい市水田圃場にてコシヒカリ根圏試料(水稲根および根に付着した土壌)および非根圏土壌を採取し、ヘッドスペースをメタン濃度2%(v/v)として25℃暗条件でびん培養を行った。その結果、根圏試料、非根圏土壌ともに培養開始直後から速やかなメタン消費が観察された。培養2週間後に試料よりDNAを抽出しPCR-DGGE解析を行ったところ、非根圏土壌にのみ観察された真核微生物のバンドがいくつか確認されたものの、真正細菌群集および真核微生物群集に根圏試料と非根圏土壌で大きな差が見られなかった。密度勾配遠心分離後の「重い」DNA画分の解析から、根圏試料、非根圏土壌ともに真正細菌に加えて真核微生物にメタン由来の炭素が同化されていることが明らかとなった。一方、T4型ファージ群集へのメタン由来炭素の同化は認められなかった。メタン由来の炭素を取り込んだ真正細菌および真核微生物は、それぞれ群集の一部であり、根圏試料では非根圏土壌に比べてより限られていた。真核微生物群集についてはさらにクローン解析を行い、その系統関係を解析した。メタン由来の炭素を取り込んだ真核微生物として、非根圏土壌ではAmoebozoa、Cercozoa、Nematodaが優占した。根圏試料ではAmoebozoaに属する1つのOTUがクローンライブラリの90%以上を占め、Nematodaは確認されなかった。また、AmoebozoaとCercozoaに属する配列は根圏試料と非根圏土壌とで異なるOTUに分類された。以上の結果から、メタン酸化が駆動する微生物食物連鎖の構造は根圏と非根圏で異なっており、根圏ではより限られた微生物が関わっていることが示唆された。
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