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演題詳細

P-136:
ヒ酸呼吸細菌Anaeromyxobacter sp. PSR-1株のヒ酸還元酵素について
○殿村 美森1, 山田 樹奈2, 天知 誠吾1 1千葉大・院園芸, 2千葉大・園芸
Anaeromyxobacter sp. PSR-1株はヒ素汚染土壌より単離された異化的ヒ酸還元細菌で、A. dehalogenans 2CP-1株と16S rRNA遺伝子の塩基配列が99.7%一致する。Anaeromyxobacter属細菌は鉄、硝酸、塩素化化合物、ウランなど多様な物質を電子受容体として利用可能なことからバイオレメディエーションへの応用が期待されているが、ヒ酸還元能の存在はPSR-1株以外には知られていない。本研究ではPSR-1株のヒ酸還元メカニズムの解明を目的としてドラフトゲノム解析、転写解析、酵素活性測定を行った。ドラフトゲノム配列よりヒ素代謝遺伝子を探索した結果、異化的ヒ酸還元酵素遺伝子 (arrAB) は認められなかった。一方DMSO reductase familyに属するtetrathionate reductase subunit Aとアノテーションされた2 種類の遺伝子 (PSR1_00324, PSR1_00330)を含む遺伝子群 (PSR1_00321-330)が確認され、それに隣接した領域(PSR1_00313-318) およびそれ以外の2つの領域 (PSR1_00117-00127,01544-01547) に解毒的ヒ酸還元酵素 (Ars) 遺伝子群が存在した。そこで、PSR1_00324およびPSR1_00330と隣接するarsC (PSR1_00314) の転写解析を行ったところ、いずれもヒ酸存在下で転写量が増加していた。ドラフトゲノム配列中でArs遺伝子群に隣接したDMSO reductase family遺伝子は他に存在しないことから、PSR1_00324、PSR1_00330のいずれか、あるいは両方がヒ酸還元に関与する可能性が示唆された。転写解析と並行して、異化的ヒ酸還元酵素の活性測定も行った。PSR-1株の破砕液の上清を粗酵素液とし、嫌気セルを用いて電子供与体にメチルビオロゲン、電子受容体にヒ酸を添加して活性を測定した。その結果、ヒ酸を電子受容体として培養した菌体の活性 (15.3 U/mg) はフマル酸存在下で培養した菌体の活性 (0.650 U/mg) と比べて23.5 倍高いことが確認された。以上の結果より、PSR-1株はヒ酸曝露によりヒ酸呼吸能が誘導されることが示唆された。
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