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演題詳細

P-141:
三宅島初成土壌に生育するパイオニア植物根域のニトロゲナーゼ活性と根圏細菌の解析
○海老原 諒子1, 平野 明則2, 郭 永1, 西澤 智康1, 上條 隆志3, 太田 寛行1 1茨城大・農, 2茨城大・院・農, 3筑波大・院・生命環境 13a2009h@vc.ibaraki.ac.jp
【目的】三宅島雄山の2000年噴火は、大量の火山灰堆積と長期にわたる火山ガス噴出によって、土壌形成や生態系再生の面で世界的にもユニークな研究モデルを提供してきた。これまでの研究によって、山頂付近(OY地点)の火山灰堆積物で新たに形成される微生物生態系では、窒素固定活性の鉄酸化細菌が優占したことを明らかにした。その後、OY地点にパイオニア植物としてハチジョウススキが生育するようになり、植生の再生が始まったが、堆積物の全窒素量は依然として低いレベル(≦0.1 g/kg)であった。そこで、本研究では、OY地点のパイオニア植物の根域における窒素固定細菌の存在について調査することを目的とした。【方法】植物体(ハチジョウススキ)と火山灰堆積物の採取は、OY地点と、植生の回復が早かったIG7地点から行った。採取した植物体の地下部は、空中振とう法と水中分画法によって、根域と根圏の画分に分けた。これらの標品についてアセチレン還元法でニトロゲナーゼ活性を測定した。活性測定は、1 %(v/v) O2を含むAr/ C2H2の混合ガスを気相とし、暗条件、30℃で行った。また、根圏土壌から無窒素リンゴ酸培地を用いて細菌を分離した。【結果・考察】両地点から採取した植物体の地下部においてニトロゲナーゼ活性が検出された。活性を比較すると、OY地点試料よりもIG7地点試料の方が高かった。非根域の火山灰堆積物の活性は、OY地点の試料においては検出されたが、IG7地点の試料においては検出されなかった。以上より、IG7地点の非根域の火山灰堆積物においては、窒素固定細菌のレベルが大きく減少していることが推察された。根圏細菌分離株の同定結果(属レベル)では、OY地点からは(19株)、Collimonas、Duganella、Paraburkholderia、Variovorx、Pseudmonasが分離され、IG7地点からも(21株)、同様な細菌が分離されたが、Oxalobacteraceae科(CollimonasとDuganella)は分離されなかった。OY地点の植物体根圏でのOxalobacteraceae科の存在は、非培養法による先行研究の結果とも一致した。以上の結果より、三宅島火山灰堆積地帯のパイオニア植物の地下部には窒素固定活性があることが示された。分離菌株の窒素固定活性は、現在、測定中である。
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