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メタゲノム解析から見える富栄養湖の窒素循環に関与する anammox の実態
○福原 康平1,2, 村上 由夏1, 荒井 渉2, 小椋 義俊3, 林 哲也3, 黒川 顕4, 諏訪 裕一1, 高見 英人2
1中央大・院理工, 2JAMSTEC・資源, 3九州大・院医, 4遺伝研・生命情報
【目的】1990年代中盤以降,嫌気性アンモニア酸化(anammox)などの発見が、窒素循環に関する新たな知見をもたらしてきた。そのため現在では、窒素循環は極めて複雑で,数多くの微生物種が関与すると考えられている。しかし、微生物生態系が持つ網羅的機能ポテンシャルとそれを担う微生物群集と窒素代謝能との位置付けについては、あまり報告例がなく、環境中の窒素循環に関与する反応とそれを担う微生物群の全貌は未だ不明である。そこで我々は、anammox と脱窒反応が両方見出された茨城県・北浦について、anammox活性が高いが脱窒活性が低い地点(KU3)に着目し、anammox活性が低い他の2地点との機能ポテンシャル比較を目的としてメタゲノム解析を行った。本研究では特に北浦の生態系に占める anammox微生物の割合と anammox関連遺伝子の分布について検討したのでその結果を報告する。
【方法】MAPLEシステムを用い1)、上記3地点から得たメタゲノム配列から、個別生物種ごとの abundance を求めた。Anammox のゲノム配列は仮想モジュールを作成し、nr database で BLAST検索した結果から abundance をマニュアルで算出した。また、5種の anammox微生物の hao様遺伝子配列を取得し、系統樹を作成した後、北浦3地点の hao様遺伝子の分布を調べた。
【結果】Anammox の最終反応に寄与する反応を担う事が知られている hao様遺伝子は、anammox の同反応を担う hzo と一つのクラスターを形成したことから、hzo と同様の機能を持つと思われる。3地点から hzo は検出されなかったが、KU3地点では最終反応の担い手である hao1 が検出された。また、anammox とは基質(一酸化窒素;NO)を競合する関係にある脱窒の活性はKU3が最も低く、個別生物種ごとの脱窒の abundance の合計と同じ傾向を示した。
1) Takami, H., et al. DNA research. 2016. doi:10.1093/dnares/dsw030