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16S rDNAに基づくメタゲノム解析による厚岸湖アマモ群落における亜酸化窒素低減微生物の探索
【目的】 2013年に実施した北海度厚岸湖の底泥による亜酸化窒素発生実験において、アマモ群落の底泥からは亜酸化窒素の発生量が認められなかった。この理由として、アマモ群落の底泥には亜酸化窒素を減少させる微生物の存在が推測された。そこで本実験では、アマモ群落と非アマモ群落の底泥を血清ビン内で培養し、亜酸化窒素の増減と培養後の微生物群集構造の変化を調べた。 【方法】 2015年7月に北海道厚岸湖アマモ群落と非アマモ群落の底泥をコアサンプラーで採取し、表層0cmから4cmの泥を回収した。採取した泥を均一に混ぜた後、血清ビンに加え、ろ過済の海水を添加し、10日間20℃暗所で培養を行った。実験区として次の3つを設定した。1)1mM塩化アンモニウム添加、2)無添加、3)0.34mL亜酸化窒素添加。培養前の泥と培養後の泥からDNA抽出した。16S rRNA遺伝子を標的としたメタゲノム解析を行った。血清ビンの気相の亜酸化窒素濃度は、ガスクロマトグラフィーを用いて調べた。 【結果と考察】 アマモ群落由来の培養系の実験区1)と2)は、亜酸化窒素の発生が見られなかった。一方、非アマモ群落の培地では、実験区1)で亜酸化窒素濃度の顕著な上昇が見られた。亜酸化窒素を添加した培養系(実験区3)では、アマモ群落の泥は非アマモ群落の泥と比べ、亜酸化窒素の顕著な減少が認められた。メタゲノム解析より、アマモ群落の全ての実験区において培養後にEpsilonproteobacteriaとBacteroidiaに属する微生物の全原核生物に占める割合が顕著に上昇した。以上の結果より、EpsilonproteobacteriaやBacteroidiaに属する微生物が亜酸化窒素の減少に関与する可能性が示唆された。