Imgheader01

第31回大会ホームページへ

演題詳細

P-147:
海底直上水中の溶存酸素濃度は表層堆積物における細菌群集構造変化の主要なenvironmental driver か?
○森 郁晃1, 山喜 邦次1, 梅澤 有1, 近藤 竜二2, 松岡 數充3, 須崎 寛和4, 中田 英昭5, 和田 実1 1長崎大・院水環, 2福井県立大・院海洋, 3長崎大・海セ, 4長崎大・院生産, 5長崎大・水 bb53512003@ms.nagasaki-u.ac.jp
【背景】近年、沿岸域において貧酸素水塊形成の高頻度化や大規模化の傾向が強まり、海洋生態系サービスの劣化が懸念されている。特に内湾の貧酸素化は、人間活動との関わりが深く、長期的な監視や影響予測を含む海域モニタリングの精緻化は重要である。本研究では超閉鎖性内湾として知られる長崎県の大村湾において、底層水の貧酸素化に伴う海底堆積物表層の細菌群集構造変化を明らかにし、水柱 溶存酸素濃度の低下がもたらす底生微生物生態系の構造と機能変化について知見を得ることを目指した。
【方法】2011年から2013年の夏季を中心に計20回、大村湾中央部において観測を行い、未攪乱堆積物コアを得た。0-5mm(極表層)及び5-10mm(亜表層)由来DNAを用いて、真正細菌と硫酸還元菌(SRB)の群集構造をARISA法とT-RFLP法でそれぞれ解析した。ARISA法で確認されたOTUの一部はクローン解析により同定した。2012年7-9月の試料は、真正細菌群集の16SrDNA-Tagシーケンスを454 GS FLX titaniumで行い、配列データをMothur(Schloss et al. 2009)で解析した。
【結果と考察】海底直上水中の溶存酸素濃度(DO)は、水温(T)および堆積物中の全有機炭素量(TOC)とともに堆積物細菌群集構造の変化に影響を及ぼし、特に極表層でDOの寄与が最大となった。極表層の細菌群集は、Wright et al. (2012) のDO区分(Oxic; > 90 μM, Dysoxic; 20-90 μM, Suboxic; 1-20 μM, Anoxic: < 1 μM) に基づいてグループ化され、Suboxic領域で細菌群集の多様度(H´)が極大となった。極表層における優占細菌群の一つはGammaproteobacteriaであり、DO区分によるグループ化に最も強く影響し、その存在割合はDOと概ね正の相関を示した。 SRBは極表層と亜表層間の群集構造の差異が有意に大きく、DOによるグループ化は見られなかった。しかし、Suboxic下では極表層のSRB群集構造の違いにDOが最も強く影響を及ぼした。
PDF