○蒲原 宏実
1, 新野 貴大
1, 松浦 哲久
3, 青井 議輝
2,4, 金田一 智規
1, 尾崎 則篤
1, 大橋 晶良
1
1広島大・院工, 2広島大・サステナセンター, 3長岡技科大, 4Northeastern university
m155261@hiroshima-u.ac.jp
【背景および目的】メタン酸化細菌 (MOB)は系統的にTypeIとTypeIIに分類される。一般的には、TypeIは低メタン濃度・高酸素濃度を好み、TypeIIは高メタン濃度・低酸素濃度を好むと報告されている (Amaral et al., 1995)。しかし、低メタン濃度・高酸素濃度環境下でTypeIIの検出が確認されている (Hatamoto et al., 2010)。メタン濃度、酸素濃度以外にもアンモニウム濃度、pH、温度が優占種に寄与するかを、多くの研究者が調べている。しかし、その決定的な要因はまだ分かっていない。そこで、本研究ではMOBの優占種に影響を与える因子を調査した。【方法】MOBの優占種に影響を与える因子を調べるために、DHS (Down-Hanging-Sponge)リアクターを用いてMOBの培養を行った。メタン濃度 (0.01-80 %)・酸素濃度 (2-20 %)・アンモニア濃度 (0.1-2000 mg-N・L-1)・pH (4-7)を変えて、計38系列のリアクターを運転した。植種源は活性汚泥とし、リアクターは全系列30 ℃で運転した。メタン濃度を流入部と流出部で測定し、メタン酸化活性を算出した。優占種をFISHにより判定した。FISHプローブは、TypeIの検出にMγ84とMγ705、TypeIIの検出にMα450を用いた。【実験結果】全ての条件でMOBの培養に成功した。FISHにより培養されたMOBのTypeを判定したところ、MOBの優占種はpHに大きく依存していた。TypeIは中性条件で優占化が確認された。一方TypeIIは、低pHおよびNH4/CH4値が高い中性条件下で優占化が確認された。培養したTypeIとTypeIIのMOBを用いて、pHおよびアンモニア濃度がそれぞれメタン酸化活性に及ぼす影響を調べた。pHにより活性の大小は異なるが大きな差はなく、どちらのTypeも全てのpH環境 (pH 4-7)で生存可能であった。供給アンモニア濃度を高くすると、両Typeともメタン酸化活性がわずかに低下した。培養およびpHとアンモニア濃度による影響実験の結果から、TypeIIはTypeIよりもアンモニウムイオンに阻害されやすいと考えられた。【結論】本研究では、優占するMOBのTypeはpHに大きく依存することが示唆された。TypeIはTypeIIに比べてアンモニウムイオンの影響を受けやすいため、中性条件においてアンモニア濃度が高い環境ではTypeIIの優占化を促すことが示された。また、本実験では、どの系も30 ℃でリアクター運転を行ったため、温度による影響を調べる必要がある。