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深海堆積物における亜硝酸酸化細菌の分布
亜硝酸酸化菌(NOB)は広汎な環境に棲息し、これまでに系統的に全く異なるNitrobacter、Nitrococcus、Nitrospina、Nitrospira、Nitrotoga の5つのグループが知られている。そして、NOBのエネルギー代謝に不可欠な亜硝酸を硝酸へ酸化する亜硝酸酸化還元酵素(NXR)においても多様性が知られ、Nitrobacter、 NitrococcusおよびNitrolancetusはサイトプラズム型、NitrospiraとNitrospinaはペリプラズム型を有す。近年、Pesterらは、NitrospiraのnxrB遺伝子を対象として、新たな検出系の構築を試みている(Pester et al., 2013)。
我々は、深海堆積物表層における無機窒素循環に関わる主要な微生物機能を明らかにするため、分子生態解析を進めており、SSU rRNA遺伝子を用いた解析結果は、深海堆積物表層における主要な亜硝酸酸化菌はNitrospinaあるいはNitrospiraであることを示した(Nunoura et al.,2013)。しかし、機能情報はこれまでに得られておらず、また、Pesterらの検出系を用いてNitrospiraのnxrB遺伝子を試みたが検出には至っていない。
今回、我々は深海堆積物中における亜硝酸酸化に関する微生物機能について、理解をより深めるため、新たにNitrospinaおよびNitrospiraに対して、それぞれ特異的に検出可能なnxrBおよび16S rRNA遺伝子プライマー構築し、日本海溝および小笠原海溝表層堆積物におけるそれぞれの分布をクローン解析により検証した。その結果、従来の定量PCRによる16S rRNA遺伝子の検出と大凡整合するNOBの分布が確認されると共に、属内のnxrBや16S rRNA遺伝子系統解析は、Nitrospira、Nitrospina共に、既知の陸上環境から検出された系統群とは異なる深海堆積物に特異的な系統群が存在することを示した。