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演題詳細

P-151:
微生物凝集体ソーティングによる未培養な亜硝酸酸化細菌Nitrotogaの獲得と生存戦略
○石井 拳人1, 藤谷 拓嗣1, 中川 達功2, 高橋 令二2, 常田 聡1 1早大・院生医, 2日大・生資科・生命化 izanagi-izanami@suou.waseda.jp
【目的】Nitrotogaは亜硝酸酸化反応を担う、唯一のBetaproteobacteria綱に属する化学合成独立栄養細菌である。様々な環境からクローンが検出されているにも関わらず、増殖速度が遅く、他の微生物と密な凝集体を形成しているため、純粋培養が難しい。そこで本研究では、微生物間相互作用によって形成された凝集体に着目し、Nitrotogaの高度集積株を獲得するとともに、Nitrotogaの生理学的性質を明らかにすることを目的とした。【方法】新規なサンプルソースであるアマモ群落の砂を採取し、NaCl濃度を調製しながら低温で集積培養した。続いて、集積株をセルソーターへ供試し、微生物凝集体の大きさと複雑さを表す前方散乱光と側方散乱光を指標に、Nitrotogaの凝集体を選択的に分取した。さらに、高度集積株を用いて生理活性試験を行った。【結果および考察】7年間低温培養することでNitrotogaの占有率は80%に達し、他の亜硝酸酸化細菌が混在しないことを確認した。クローニングにより集積株は29菌種の細菌を含んでいることが推定され、Nitrotogaの集積株をCandidatus Nitrotoga amamosa AM1と命名した。集積株AM1は、シングルセル、あるいは従属栄養細菌との凝集体として存在した。凝集体をソーティングし、継代培養した結果、AM1の占有率を99%まで高めることに成功し、共生菌としてAcidovorax sp.を同定した。集積株における従属栄養細菌の種類は多様であったが、凝集体をソーティングしたことで共生菌種を減少させることができた。高度集積株を用いた生理活性試験では、AM1に特有の生理学的性質を明らかにした。AM1の最適温度は他属の亜硝酸酸化細菌と比較して10℃以上低く、低温性の亜硝酸酸化細菌であることが判明した。また、高濃度のアンモニアに対して耐性があり、30 mM以下では亜硝酸酸化速度を加速させた。本研究により、AM1は低温やアンモニアに対して幅広い適応性を示し、多種多様な亜硝酸酸化細菌において独自の生存戦略をとっていることが示唆された。
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