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海底泥火山メタンプルーム中の微生物群集構造
付加帯や沿岸域の海洋堆積物は多くのメタンを胚胎し、その一部は泥火山を含むメタン湧水として海底から海洋に放出される。放出されたメタンは海洋中で希釈もしくは微生物による酸化をうけて濃度が減少する。海洋中へのメタンの供給には、他に海底熱水活動が知られており、安定同位体、微生物培養、群集構造からメタンの微生物による酸化が示されており、北西太平洋ではMethylococcalesがメタン酸化の主役を担っている。近年、メタンハイドレートへの注目とともに、沈み込み帯の陸側斜面から多くの泥火山地形が発見されており、その一部はメタンを放出していることが明らかになっている。本研究の目的は、水深の異なる3箇所の泥火山から海洋中に放出されるメタンプルームの微生物群集構造を調べ、メタンの挙動への微生物の関与および微生物種や群集構造の特徴を明らかにすることにある。KK13-2およびKS14-11航海にて、足摺岬沖(水深約800m)、種子島沖(水深約1500m)、および東シナ海(水深約180m)にて採取した海水試料について、メタン濃度、メタン炭素同位体、微生物細胞数、16S rRNA群集解析を行った。東シナ海のメタンプルームでは、明瞭な微生物密度異常もメタン酸化系統群の存在量も極めて少なく、同位体化学によりメタンの微生物酸化がほとんど生じていない結果と一致する。一方、深海域ではメタンの濃度異常が認められた水深の試料で、微生物細胞がその鉛直プロファイルから明瞭に増加していた。メタンプルーム試料中では熱水プルームで見いだされるSUP05やSAR324などの硫黄代謝系の微生物が見いだされるとともに、メタン酸化系統群は細胞密度やメタン濃度の増加が認められる水深で、Methylobacterium(~5.6%)が優占系統群として見いだされ、熱水プルームとは異なる種類が優占していた。