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演題詳細

P-154:
沖縄本島に分布する付加体の深部帯水層におけるメタン生成メカニズム
○眞柄 健太1, 松下 慎2, 佐藤 悠2, 石川 修伍1, 新里 尚也3, 木村 浩之4 1静大・院・総合, 2静大・創造院, 3琉大・熱帯生物研, 4静大・グリーン研
静岡県中西部から中部,紀伊半島,四国,九州,そして沖縄にかけての太平洋側の地域には,付加体と呼ばれる厚い堆積層が分布している.付加体は海洋プレートが陸側プレートの下に沈み込む際,海洋プレート上の海底堆積物がはぎとられ,陸側プレートに付加して形成された地質構造である.付加体の堆積層には,有機物が豊富に含まれている.また,付加体の地下は砂層と泥層の互層からなり,大量の嫌気性地下水が蓄えられた帯水層も存在する.さらに,付加体の深部帯水層には大量のメタンが存在していることが報告されているが,そのメタン生成に関する知見は乏しい.付加体によって形成された沖縄本島は周囲を海に囲まれており,その深部帯水層は海水の影響を受けていると考えられる.しかし,深部地下水の流動に関する知見は不足している.そこで,本研究では白亜紀から第三紀の海底堆積物に由来する付加体が基盤として分布する沖縄本島南部を調査し,そこに構築された4つの大深度掘削井にて地下温水と付随ガスを採取した.そして,地下温水の環境データ測定,付随ガスの化学分析,付随ガスに含まれるメタンと地下水中の溶存無機炭素(主にHCO3 -)の炭素安定同位体比分析を行った.さらに,地下温水に含まれる微生物群集の嫌気培養およびメタ16S rRNA遺伝子解析を試みた.
地下温水の塩濃度とイオン濃度から,沖縄本島南部の深部帯水層は海水の影響を強く受けているサイトと,天水の影響を受けているサイトの両方が存在することが示された.また,採取した付随ガスにはメタンが93 vol%以上の割合で含まれていた.炭素安定同位体比分析の結果から,付随ガスには,微生物起源のメタンが含まれていることが示された.地下温水に含まれる微生物群集のメタ16S rRNA遺伝子解析の結果,水素発生型発酵細菌と水素資化性メタン生成菌が優占していることが示唆された.また,地下温水に有機物を添加した嫌気培養の結果,水素発生型発酵細菌と水素資化性メタン生成菌による水素ガスとメタンの生成が観察された.さらに,本培養にて増殖した微生物群集においても水素発生型発酵細菌と水素資化性メタン生成菌が優占することが確認された.これらの結果より,沖縄本島に分布する付加体の深部帯水層では,水素発生型発酵細菌と水素資化性メタン生成菌の共生により,堆積層中の有機物が分解され,メタンが生成されていることが明らかとなった.
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