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演題詳細

P-155:
地下帯水層生態系におけるrare biosphereの群集形成に寄与する地球化学的要因
○山本 京祐1,2,3, Hackley Keith C.4,7, Kelly Walton R.5, Panno Samuel V.4, 関口 勇地6, Sanford Robert A.7, Liu Wen-Tso8, 鎌形 洋一1, 玉木 秀幸1,2,3,8,9 1産総研・生物プロセス, 2筑波大・生命環境, 3JST ERATO, 4イリノイ州立地質調査所, 5イリノイ州立水質調査所, 6産総研・バイオメディカル, 7イリノイ大・地質, 8イリノイ大・工, 9東大・生セ k.yamamoto@aist.go.jp
【目的】一般的に自然微生物群集は限られた種類の優占種と極めて多様な希少種(rare biosphere)とで構成される。希少種はその存在量の少なさから、至適ではない生育条件下にあり生物活性は低いと考えられがちであったが、そうした希少種の中にも、活発に代謝をおこない群集全体の機能や構造に寄与するものが存在することが近年の研究で明らかとなってきた。しかし、希少種群集の形成過程や挙動を司る要因に関する知見は非常に少なく、特に、希少種群集の集合プロセスに化学パラメータなどの環境因子や地理的隔離といった中立な要因がどれほど寄与しているかについては未知の部分が多い。そこで本研究では、地下水生態系を対象として、希少種を含めた高解像度な微生物群集構造データと地理データおよび各種地球化学パラメータとの相関解析によって群集形成に寄与する各種要因について知見を得ることを目的とした。【方法・結果】米国イリノイ州東部、Mahomet帯水層の13地点から地下水を採取し、微生物群集構造解析(DNA/RNAベースのIllumina MiSeqによる16S rRNA amplicon sequence)および化学成分分析を実施した。ほとんどのサンプルでDNAおよびRNAベースの群集構造がよく一致し、希少種群集中にも一定の生物活性を有する系統群が検出された。群集構造の類以度から13の地下水サンプルは大きく3つのグループに分類され、希少種群集のデータ(各サンプル中で存在量0.1%以下のOTU)のみを用いて群集構造を比較しても同様のグループ分けとなった(p<0.05)。その一方で、優占種のデータ(存在量1.0%以上のOTU)のみを用いて構造比較した場合では明確なグループ分けはみられなかった。3つのグループはサンプルの地理的関係性を概ね反映していたが(西部、中央部、北東部)、全サンプル間の群集類以度にdistance-decay関係の傾向はみられず、地理的隔離による中立的な群集集合の寄与は弱いと考えられた。また、群集組成と化学パラメータとの相関を評価したところ、グループ分けは有機物(Non-volatile organic carbon)や硫酸等の化学要因によって主に説明された。このように、希少種群集も一定の生物活性を有し、その群集形成に現場の化学パラメータが大きく寄与している可能性が示唆されたことから、群集全体の機能や構造変化を評価する際にも多様な希少種群集の機能・活性を勘案することが重要であると考えられる。
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