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演題詳細

P-159:
山形県庄内沿岸汽水域堆積物に生息する嫌気的メタン酸化微生物の活性および多様性評価
佐々木 捺実1, 曽田 直紀2, 塩澤 圭介1, ○服部 聡1,2 1山形大・農, 2山形大・院農
【目的】山形県庄内沿岸河口域(酒田市豊川)は海洋および河川の双方から有機物が流入する環境にあり、これらの有機物が蓄積することにより形成した堆積物は深さ約1 mに達する。近年、当研究室は当該堆積物中に嫌気的メタン酸化(AOM)活性を見い出すとともに、メタン生成アーキアや硫酸還元細菌が存在していること等を明らかにしてきた。一方、堆積物深度ごとのAOM活性や、上記微生物種が堆積物深度でどのように変遷するのか等、垂直活性・多様性分布に関する知見は未だ乏しい状況にある。そこで本研究では、これらを明らかにすることを目的とした。【方法】堆積物を垂直方向に採取後、深度ごとに10 cm間隔で切り出したものを供試試料とした。各々の試料を人工汽水の入ったバイアル瓶に添加懸濁後、13CH4を気相部に充填、25℃でインキュベートした。AOM活性評価は気相部を経時的に採取し、ガスクロマトグラフ質量分析計で13CO2を測定することにより行った。なお、AOM活性にメタン生成経路や硫酸還元経路が関与しているのか否かを明らかにするため、メタン生成阻害剤あるいは硫酸還元阻害剤存在下においてもAOM活性を測定した。メタン生成アーキアおよび硫酸還元細菌の多様性は、各深度堆積物から抽出したゲノムDNAを鋳型として、methyl-CoM reductase α subunit (mcrA) 遺伝子およびdissimilatory sulfite reductase α subunit(dsrA)遺伝子をクローニングすることにより評価した。【結果および考察】13CH4によるAOM活性評価を行った結果、堆積物深度が深くなるにつれ、AOM活性が増加した。また、メタン生成阻害剤および硫酸還元阻害剤存在下では、AOM活性が著しく低下した。これらの結果から、当該堆積物におけるAOM反応系はメタン生成経路の逆反応系かつ硫酸還元反応依存性であることが示唆された。機能遺伝子を用いた多様性解析においては、嫌気的メタン酸化アーキア(ANME)が含まれるANME-2aおよびANME-3 groupに属するクローンや、各種の硫酸還元細菌のクローンが堆積物深度に応じて検出された。以上の結果から、当該堆積物中では逆メタン生成能を有するANMEが硫酸還元細菌存在下で嫌気的メタン酸化反応を行い得ることが示唆された。
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