Imgheader01

第31回大会ホームページへ

演題詳細

P-172:
電気産生微生物群集における電極の酸化還元電位の変化に対する多様な遺伝子発現応答
○石井 俊一1,3, 鈴木 志野1,2,3, Nealson Kenneth H.2, Bretschger Orianna3 1海洋研究開発機構, 2南カリフォルニア大, 3J. Craig Venter Institute sishii@jamstec.go.jp
 微生物は通常、有機物を酸化し、電子受容体を還元する事によりエネルギーを獲得し、呼吸している。その中でも、菌体外電子輸送(Extracellular electron transfer、EET)による固体状の電子受容体の還元は、一つの重要な呼吸形態である。しかしながら、実環境中では、様々な酸化還元電位を示す固体状の電子受容体(酸化鉄など)が存在し、微生物がどのようなメカニズムで異なる酸化還元電位を持つ固体表面に電子を輸送するのかは明らかになっていない。そこで本研究では、ショ糖を分解し発電する電気化学バイオリアクター中で、固体状の電極表面を異なる三つの酸化還元電位に制御し、電気産生微生物群集の電子フローおよび代謝フローを同定した。我々は、新たに開発された刺激応答型メタトランスクリプトーム法を用い、電極電位の変化に伴って微生物およびその遺伝子がどのように発現応答をするかを解析した。 まず、三つの電気産生微生物群集のメタゲノムから、55種の微生物株のドラフトゲノムを作成し、その中からGeobacteraceaeに属する9種の発電菌のドラフトゲノムを同定した。その後、3種の異なるEET刺激(高い酸化還元電位、電子輸送ストップ、ショ糖の有無)を加え、各微生物株の遺伝子発現応答を解析した。すると、9種のGeobacteraceae株に、明確な酸化還元電位の依存性、基質レンジ(水素、ギ酸、酢酸、エタノールなど)の相違、そして菌体外電子輸送に関わるマルチヘム型のシトクロームCのプロファイルの違いが確認された。これらの結果により、電気産生微生物群集中の発電菌には、多様な生物学的地位(ニッチェ)が存在し、特に、固体表面の酸化還元電位は、発電菌の選別における大きな選択圧となっている事が示された。
PDF