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演題詳細

P-173:
電極上に形成されるシュワネラ菌のバイオフィルムと電極電位の関係
○北山 実穂, 高妻 篤史, 渡邉 一哉 東薬大・院生命 s116079@toyaku.ac.jp
【背景・目的】シュワネラ菌 (Shewanella oneidensis MR-1株) は、多様なエネルギー代謝を行うことができる細菌である。また、グラファイト電極を電子受容体として利用できることから、微生物燃料電池におけるモデル細菌として世界的に広く研究されている。これまでの研究で、MR-1株は発電時に電極上にバイオフィルムを形成することが知られている。そこで本研究は、電極電位や電流量とバイオフィルム構造にはどのような関係があるのかを明らかにすることを目的とした。
【方法】発電時のバイオフィルム形成過程を観察するため、基板にグラファイト電極を用いたフローセルを作製した。また、嫌気条件でも蛍光を発する緑色蛍光タンパク (GFP) を構成的に発現するMR-1株を構築した。バイオフィルムの三次元構造の経時的観察には、正立型共焦点レーザー顕微鏡を用いた。
【結果・考察】発電条件 (電極電位+0.2 V vs Ag/AgCl) および非発電条件 (好気条件) におけるバイオフィルムの比較を行った所、非発電条件には厚く部分的に大きく盛り上がったバイオフィルムが観察された。一方発電条件においては、薄く均一なバイオフィルムが観察され、非発電時のバイオフィルム構造とは大きく異なることが明らかになった。さらに、高電極電位(+0.2 V)と低電位(-0.2 V)でのバイオフィルム構造を比較したところ、電極電位は電流量やバイオフィルム厚に影響を及ぼすこと(例えば、バイオフィルム厚が6 μm時の電流密度は高電位で8.8 μA/cm2、低電位で1.5 μA/cm2)が示された。同時にバイオフィルムの構造と細胞外多糖 (EPS) の局在を調べた所、高電位条件では薄く均一なバイオフィルムが形成され、EPSが均一に局在することが明らかになった。一方、低電位条件では部分的にバイオフィルムが小さく盛り上がり、その盛り上がりの部分にEPSが局在していた。これらの結果から、電極電位が電流生成量に影響を及ぼす過程の一つとして、バイオフィルム構造の変化が含まれることが明らかになった。今後、バイオフィルム形成と電流生成のより詳細な関係を明らかにする予定である。
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