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炭素材料の酸化による汚水からの生物学的電流回収の促進
【目的】 我々は、黒鉛を化学的に酸化した炭素原子1層のシート状分子である酸化グラフェン(Graphene oxide、以下GO)を電子受容体とした嫌気培養により、GO還元物(rGO)によって電流生産微生物を集積・捕捉したアノードを作成できることを示してきた。本研究では、このrGO-微生物複合体を微生物燃料電池(以下MFC)型廃水処理装置のアノードとして利用することを目的として、実廃水をエネルギー源とした培養によりrGO-微生物複合体を形成可能か、本複合体を用いて実廃水をエネルギー源とした電流回収が可能か試みた。
【方法】 rGO-汚泥複合体は、1Lの嫌気槽水に対し67mLの10 g/L GOを混ぜた後28℃で2週間~1ヵ月静置培養して作成した。対照として用いた黒鉛フェルトは、rGO複合体と同様の大きさにカットし、この電極に1Lの嫌気槽水を遠心濃縮した10mLの溶液を注入しrGO複合体に供したバイオマス量をそろえた。定電圧培養は、900ml容積の蓋付きガラス瓶内に、参照電極 (Ag/AgCl) 、対電極(白金線)、集電体としてφ3.0cm、高さ1.0cmの白金線で作成した籠を集電体として設置し、籠内にrGOまたはGFを取り付けて行った。
【結果】 嫌気槽水とGOを混合培養した結果、ゲル状の23 mS/cmの導電性をもつ複合体が形成されることが示された。rGO-汚泥複合体の汚水中における電流生産試験を23日間行った結果、rGO複合体における電流生産のピークは、179 - 310μA/cm3 であり、GF複合体の2-3倍程度であった。COD除去速度は、rGO複合体とGF複合体との間で大きな差はなく、0.48 - 1.2 mg/d/cm3であった。生産電流と除去CODからクーロン効率を求めた結果、rGO複合体は30 ? 110 % のクーロン効率を示し全体を通してGF複合体のクーロン効率 (17 ? 52%) に比べて高かった。さらに、この培養前後の容器内バイオマスを直接検鏡法により計測した結果、rGO複合体での複合体における細胞捕捉率は全細胞数の38%(GFでは14%)であり、同化率は6.8?106 cells/mg-CODと見積もられ、GF複合体を用いた場合の同化率(7.6×107 cells/mg-COD)の1/10程度であった。16SrRNA遺伝子アンプリコン解析の結果、両複合体ともGeobacter属細菌を優占種とした類似した群集を有した。顕著な違いとして、rGO複合体ではDesulfarculaceae 科(12%)、Geothrix属(7.6%)が多く検出された。総じて、rGO複合体では、GF複合体に比べ多様な電流微生物の増殖を促すと考えられた。