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演題詳細

P-188:
ゴエモンコシオリエビの外部共生菌相を用いた環境影響評価方法の構築
○和辻 智郎, 元木 香織, 羽田 枝美, 長井 裕季子, 高木 善弘, 豊福 高志, 山本 啓之, 高井 研 海洋研 watsuji@jamstec.go.jp
沖縄の深海熱水噴出域ではゴエモンコシオリエビやヒバリガイを優先種とする独自の生態系が形成されている。ゴエモンコシオリエビの腹側剛毛には細菌(外部共生菌)が付着しており、Sulfurovumに分類される独立栄養性硫黄酸化細菌とMethylococcaceaeに分類されるメタン酸化細菌を多く含んでいる。そして、ゴエモンコシオリエビはそれらの外部共生菌を食べることで、栄養を得るというユニークな生態を持つことを明らかにしてきた。一方で、沖縄の深海熱水噴出域の熱水鉱床は金、銀、銅などの鉱物含有量が高く、埋蔵量も豊富であることから、世界初の海底鉱物資源開発プロジェクトとして2017年には採鉱に関わるパイロット試験が開始される。採鉱では周辺環境を擾乱するなどの生態系への影響が懸念されるため、生態系保護の観点から掘削の影響による環境変化を鋭敏に検出する方法の構築が求められている。そこで、本研究ではメタンを唯一のエネルギー源とする水槽でゴエモンコシオリエビを飼育し、外部共生菌相と環境の関係性を明らかにすることで、外部共生菌相を用いた環境影響評価方法を構築することを目的とした。飼育実験の結果、外部共生菌相のSulfurovumMethylococcaceaeを指標とすることで、環境中の硫化水素とメタンの存在をそれぞれ判定できることが強く示唆された。また、メタン添加水槽でゴエモンコシオリエビを飼育すると一次生産者のメタン酸化細菌が供給する有機物が起点となり、従属栄養性細菌が外部共生菌相の多くを占めることが示された。つまり、化学合成細菌で占められる現場の外部共生菌相において従属栄養性細菌が優占化することは、深海熱水域の一次生産者である化学合成細菌が作り出した有機物が拡散しにくい閉鎖的な環境に変化したことを示唆する。そのため、ゴエモンコシオリエビを宿主とする外部共生菌の菌相解析は掘削後の熱水成分の長期的なモニターや地形の変化による海水の拡散性の評価に利用できると考えられた。
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