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シロアリ腸内原生生物の細胞表面に共生する新規Endomicrobium属細菌
シロアリの腸内には多様な原生生物と原核生物が共生しており、これらの微生物が効率的な木質分解に寄与している。腸内原核生物には、腸内自由生活型の他、腸内原生生物の細胞表面・細胞内の共生体が存在する。
本研究で着目するEndomicrobium属細菌は、主に腸内原生生物の細胞内共生体として存在する腸内優占種群の一つである。先行研究により、他の腸内優占種群であるBacteroidales目、Treponema属の細菌については、腸内自由生活型や、腸内原生生物の細胞表面・細胞内の共生体が報告されている。しかしながら、これまでEndomicrobium属細菌については、腸内原生生物の細胞表面共生体の報告がなかった。
本研究では、蛍光in situハイブリダイゼーションにより細胞表面共生Endomicrobium属細菌を探索した。その結果、複数のシロアリ腸内原生生物種の細胞表面に共生する新規Endomicrobium属細菌を複数種発見した。この内の一種について透過型電子顕微鏡観察を行ったところ、腸内自由生活型のEndomicrobium属細菌と形態が類似しており、特異な構造物により原生生物細胞表面に付着していた。16S rRNA遺伝子配列を用いた系統解析の結果、今回発見した細胞表面共生体のEndomicrobium属細菌は多系統であることが示唆された。加えて、腸内自由生活型細菌の配列と単系統を成すものが存在したことから、これら細胞表面共生体は複数の系統の腸内自由生活型から独立に派生したものとみられる。