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演題詳細

P-199:
シロアリ腸内原生生物細胞表面共生細菌のmicrodiversity解析にもとづく伝播様式についての考察 
○猪飼 桂1, 望月 悠司1, 雪 真弘2, 大熊 盛也2,3, 本郷 裕一1,3 1東工大・生命理工, 2理研・CSRS, 3理研・BRC-JCM kigai@bio.titech.ac.jp
下等シロアリ腸内には多様な原生生物(鞭毛虫)が生息し、特徴的なことに、原生生物の細胞内と細胞表面に共生細菌が存在する。細胞表面共生細菌が木質分解や窒素固定など腸内共生系で重要な役割を担うことが明らかになっている一方で、その伝播様式や、原生生物の分裂時に同調して分裂するのか、原生生物に絶対共生しているのか、などについては未知な部分が多い。細胞内共生細菌の場合、ゲノム配列から予測される機能と、宿主1細胞内でのそれらの16S rRNA遺伝子およびITS配列がほぼ100%相同であることから、自由生活相を持たない絶対共生体で、垂直的にのみ次代に伝わると考えられている。本研究では、ヤマトシロアリ腸内で優占的な、原生生物細胞表面共生細菌 ‘Candidatus Symbiothrix dinenymphae’の ITS 配列に基づくmicrodiversity解析を行い、細胞表面共生細菌の伝播様式の手がかりを得ることを目指した。
Ca. Symbiothrix dinenymphae’は、Dinenympha属原生生物の少なくとも3種の細胞表面に、鞭毛のように数本から数十本、付着共生している。Dinenympha各種を1細胞ずつ分取し、全ゲノム増幅後、校正機能付きDNA polymeraseを用いたPCRにより‘Ca. Symbiothrix dinenymphae’の16S rRNA遺伝子とITSを含む約2,300 bpを増幅し、クローン配列解析を行った。同時に、Dinenymphaの18S rRNA配列を決定し、宿主の種類を確認した。
Dinenympha 1細胞サンプルのうち、1つで共生細菌ITS配列は100%相同であったが、他7サンプルでは多様なITS配列が取得され、1サンプル内のITS相同性は85-99%であった。大きな欠損や挿入もみられた。これらのITS配列の系統解析を行ったところ、‘Ca. Symbiothrix dinenymphae’には明確な宿主種特異性は認められなかった。これらの結果から、細胞表面共生細菌 ‘Ca. Symbiothrix dinenymphae’は、細胞内共生細菌のように垂直的にのみ伝播されるのではなく、宿主Dinenympha種間での水平的な伝播も生じうることが示唆された。
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