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演題詳細

P-203:
Burkholderiaのヒミツの姿~Burkholderia細胞壁合成不全変異株はホソヘリカメムシ共生時に異常な細胞形態を示す
○後藤 栞1, 竹下 和貴2, 大林 翼1, 松浦 優3, 菊池 義智1,2 1北大・院農, 2産総研・生物プロセス, 3琉球大・熱生研 s-510@chem.agr.hokudai.ac.jp
 細菌との内部共生は動植物に広く見られる普遍的な現象で、共生細菌は宿主生物の栄養代謝に重要な役割を果たしている。共生細菌にとって宿主体内は栄養豊富な安定した環境である一方、宿主免疫系などのストレスも存在し、共生細菌には様々な変化が引き起こされる。例えば、根粒菌は共生に伴いバクテロイドと呼ばれる窒素固定に特化した多核の巨大細胞に変化するが、どのような機構でこのような形態変化が起きるのかはほとんど分かっていない。
 大豆の重要害虫として知られるホソヘリカメムシは、消化管後端部に袋状の組織(盲嚢、もうのう)を多数発達させ、その内腔中にBurkholderia属の共生細菌を保持している。Burkholderiaはβ-プロテオバクテリア綱に属する土壌細菌で、ホソヘリカメムシは幼虫期に土壌中からこの共生細菌を特異的に獲得することが知られる。この共生細菌は培養および遺伝子組換えが容易であり、またホソヘリカメムシはRNAiが容易であることから、ホソヘリカメムシ-Burkholderia共生系は内部共生現象の分子基盤を解くための有用なモデル系だと考えられている。カメムシ盲嚢内において、共生細菌は小型化し細胞表面構造(特にLPS構造)が大きく変化することが報告されている。そこで本研究では細菌の表面構造、特に細胞壁に着目し、それら細胞壁成分がホソヘリカメムシ-Burkholderia共生系の成立と維持に果たす役割について調査した。
 先行研究において我々は、ペプチドグリカン加水分解酵素であるN-acetylmuramyl-L-alanine amidase (AmiC)を欠損した共生細菌変異株(ΔamiC株)が試験管培養時に連鎖状になることを発見した。このΔamiC株がカメムシ体内でどのような挙動を示すのか明らかにするため、定量PCRにより感染後の共生細菌動態を調査すると共に、盲嚢内における共生細菌の細胞形態変化を観察した。野生株、ΔamiC株の緑色蛍光タンパク質(GFP)発現変異株を作成し、カメムシに経口接種後、2~5齢幼虫それぞれにおける細菌量を調査し、細胞形態を蛍光顕微鏡により観察した。その結果、ΔamiC株の共生細菌量は野生株と大きな差は見られなかった一方、共生細菌の細胞形態は劇的に変化しており、ΔamiC株では膨大化した巨大細胞(swollen cells)が各齢を通して多数観察された。
 これらの結果より、細胞壁の恒常性は宿主への感染能には影響しないものの、カメムシ盲嚢内における細胞形態変化に大きく影響することが明らかとなった。
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