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演題詳細

P-204:
メタゲノム的アプローチによる生理活性物質を生産する海綿共生微生物の探索
田中 志貴子1,2, ○新里 尚也1, 齋藤 星耕1, 青山 洋昭3, 白井 由実1, 朴 相和1, 伊藤 道浩1, 田中 淳一2 1琉球大・熱生研, 2琉球大・院理工, 3琉球大・戦略セ
【背景】
海棲生物である海綿からは様々な生理活性物質が単離されているが、これらは海綿に付随する微生物(共生微生物)により生産されていると考えられている。こうした生理活性物質の生産を担う微生物の特定と生合成経路の解明は、海綿の共生微生物の多くが難培養性である等の理由により、その詳細は明らかとなってない。本研究では、沖縄近海で採取される、同一化合物を含有する異種海綿について、網羅的な共生微生物相の解析を行い、生理活性物質の生産と共生微生物の関係を探ることを目的とした。
【材料・方法】
本研究では、アクチンの重合阻害活性を示す化合物、 latrunculin を共通に含有する2種の海綿、Cacospongia mycofijiensis ならびに、Negombata sp.を研究対象とした。沖縄近海で採取した海綿の各3個体よりDNAを抽出し、バクテリアの16S rRNA遺伝子のV1-V3領域をPCR増幅した。次いで、それらをRoche 454 GS Jr.を用いて網羅的シーケンス解析をおこない、それぞれの海綿サンプルにおける共生微生物相を解析した。
【結果・考察】
GS Jr. によるシーケンス解析の結果、全体として約165,000リードの配列が得られた。この内、有効なデータを97%の配列相同性を閾値としてクラスタリングをおこなった結果、試料あたり156~273のOTU(Operational Taxonomic Unit)が得られた。次いで、得られたOTUをBLASTを用いてデータベース上の配列と照合し、各OTUの系統学的位置の推定をおこなった。その結果、ActinobacteriaCyanobacteriaProteobacteria が比較的高い割合で検出された。また、各サンプルにおいて最も優占している上位10 OTU(計40 OTUs)をサンプル間で比較したところ、同一海綿種内での組成は極めて似通っているものの、海綿種間の組成は大きく異なっており、共通するOTUはほとんど見られなかった。しかしながら、ProteobacteriaActinobacteria において、同一OTUでは無いものの、系統学的に近接したOTUが複数、共通に見出されていたことから、これらの中にlatrunculinを生産している系統群が含まれている可能性も考えられた。これらの点については、現在、詳細な検証を進めている。
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