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演題詳細

P-205:
カブトムシ幼虫腸管内細菌叢と代謝産物
○和田 典子1, 岩淵 範之2, 砂入 道夫2, 岩田 隆太郎3, 中嶋 睦安2, 安齋 寛1 1 日大・生資科・くらしの生物, 2日大・生資科・応生科, 3日大・生資科・森資科 wada.noriko@nihon-u.ac.jp
【目的】森林生態系の中で,温帯の落葉広葉樹林に生息し、消費者および分解者として大きな地位を占めている森林性昆虫は,植物由来の各種多糖の分解に大きな役割をしていると考えられている。特にカブトムシの幼虫は、雑木林に生息し、植物遺体などを摂食する腐食性の昆虫として有名であり、分解者として、森林の物質循環で重要な役割を持つ昆虫である。本研究グループでの先行研究により、前腸、中腸、後腸に分かれているカブトムシ幼虫の腸管は、pHがアルカリ性であり、幼虫が摂食する腐植したクヌギやコナラなど含まれるβ-1,3-グルカン、β-1,4-キシラン、ペクチン等の可溶性多糖対する強い分解活性が、特に中腸においてその傾向が顕著に示され、カブトムシ幼虫腸管における糖質分解活性の分布が明らかになった。しかしながら、腸管内に存在する糖質の代謝経路や腸管内細菌の役割についてはまだ明らかになっていない。そこで本発表では、カブトムシ幼虫の腸内環境と細菌叢および酵素で分解された糖が最終代謝産物としてどのようになるのかを解明する目的で各種実験を行った。【方法】腸内環境について、揮発性脂肪酸・水素・メタンの検出はGCで行った。また、溶存酸素濃度は専用のプローブを使用した。腸管内細菌叢については、幼虫を10分割にし、さらに腸管内容物と腸管壁に分離してからTotal DNAを抽出後、PCR-DGGEを行い、さらに得られたバンドの部位別変化を主成分分析を用い検討した。【結果と考察】腸管内の溶存酸素濃度を測定したところ、中腸・後腸共に低酸素状態であり、特に後腸内は著しく嫌気的であった。そこで、腸内容物から発生するガスを捕集し分析した結果、中腸で水素が、後腸でメタンが検出された。揮発性脂肪酸については、どの部位でも酢酸が多く検出された。酢酸濃度を部位別に見ると,飼料である腐葉土と比較しても、中腸前半で増加し,後半で減少、後腸ではさらにそれが低下していたことから,中腸において,酵素分解によって存在する可溶性糖質から発酵により酢酸が生産され,その後,後腸で消化吸収されている可能性が考えられた。腸管内細菌叢については、PCR-DGGEとバンドの主成分分析の結果から、中腸と後腸、腸管内容物と腸管壁でそのプロファイルを比較すると、細菌叢の明確な部位別の変化が検出され、腸内環境と発酵産物の組成から腸内の分解経路を推定した。
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