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演題詳細

P-221:
山崩れによりかく乱された御嶽山における根粒と根圏土壌中のフランキアの群集構造
○池邉 茉莉1, 中島 沙映2, 山元 巧2, 柴田 銃江3, 今矢 明宏3, 壁谷 大介3, 齋藤 智之3, 岡本 透3, 小野 賢治3, 森貞 和仁3, 飛田 博順3, 九町 健一1 1鹿児島大・院理工, 2鹿児島大・理, 3森林総合研究所
土壌放線菌であるフランキアは、ハンノキなどのアクチノリザル植物の根に根粒を形成して窒素固定を行う。フランキアとアクチノリザル植物との共生には宿主特異性が見られ、フランキアは宿主植物の異なる4つのグループ(ハンノキグループ、モクマオウグループ、グミグループ、バラグループ)に分類される。1984年の長野県西部地震による山崩れにより、御嶽山は広範囲にわたり森林がかく乱された。その後植生は徐々に回復し、その過程でハンノキ種樹木の生育が見られた。本研究の目的は森林の植生の回復過程におけるフランキアの群集構造の変化やそれを引き起こす要因を明らかにすることである。
御嶽山の標高2000 m付近に設定された5つのかく乱プロット(B1、B2、B3、P7、P22)および残存森林から、2012年と2014年に採取したミヤマハンノキとヤハズハンノキの根粒と、それらの根圏土壌を実験に用いた。P7は残存森林に接しており土壌の肥沃度と植生の回復度が高くミヤマハンノキの生育が見られた。P7に比べてB1、B2、B3、P22は肥沃度が低く、植生の回復度も低かった。B1、B2ではミヤマハンノキが、B3ではヤハズハンノキが生育していた。P22は残存森林からもっとも離れており、ミヤマハンノキとヤハズハンノキが見られた。採取した根粒と土壌から全DNAを抽出し、特異的なプライマーでフランキアの窒素固定関連遺伝子 nifH を増幅して塩基配列を決定し、系統解析を行った。
検出された配列は全てハンノキグループであり、大部分は3つのクレード(C型、D型、E型)に分類された。根粒中と根圏土壌中のフランキアの型は対応する場合としない場合とがあった。例えばB3では根粒・土壌ともにC型が見られたが、B1では根粒ではC型が、土壌ではD型が検出された。また、残存森林ではC型・D型に加えて、これらのクレードには属さないものも複数見られたが、P22ではC型しか見られなかった。これらの結果から、かく乱直後は生息するフランキアの型は少ないが、土壌の肥沃度が増し植生の回復が進むにつれて、フランキアの群集構造に変化が起こり多様性が高まると考えられた。
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